閉館近くの図書館に駆け込んで、閉架に保存されたクェンティン・ブレイクの7冊の絵本の閲覧をカウンターにお願いする。出してもらった本にさっと目を通すと、全体的に水準は高いが、『みどりの船』のような作風の作品はない。次の3冊は書庫に返すことにした。
『素敵な曲芸師アンジェロ』旅芸人一家の男の子が、不幸の身の上の女の子を助けて一座に引き取る、という素直でくせのないストーリーがちょっと物足りない。ていねいな線の絵が愛らしくてよかった。
『スプロケットおばさんのポケット』ちょっと不思議な大人シリーズ。たくさんのポケットからいろんなものを取り出すおばさん。ただそれだけ。
『10わのインコどこいった!』インコを愛する博士の屋敷の中での、インコの鬼ごっこの話。いろんな部屋で博士から隠れたインコの姿を見つけるのが、子どもには楽しいかも。
借りたのは、次の4冊。
『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』わがままなアーミテージさんは、自分の自転車に次々に付属品をとりつけていくが、ふくれあがった自転車はとうとうばらばらに。ありがちな話だが、懲りない主人公が、ローラースケートに目をつけるラストがいい。
『帆かけ舟、空を行く』世界中の子どもたちとのワークショップで作ったという経緯も含めて、ちょっといい話すぎるかも。いい話だが。
『シンプキン』いたずら坊主のシンプキンの日常を面白くリズミカルに描く。主人公のキャラと絵がいい。これが、ベスト2。
『ピエロくん』これが、ベスト1。台詞は一切ない。仲間と一緒に捨てられたおもちゃのピエロが、冒険して仲間を救い、新しい家を見つけるまでの話。漫画のコマワリみたいに小さな絵が並ぶが、はっとするような大きな絵も現れる。仲間を助けたピエロくんがあたらしい家族とともに、夕焼けの中、勇んで家を目指すシーンは、美しい。クエンティン・ブレイクは、何よりも優れた画家なのだと思う。