大井川通信

大井川あたりの事ども

露天風呂の祈り

退院明けには湯治と思って、何回か続けて近所の温泉に行ったが、長続きはしなかった。気分転換をしようと、およそ4カ月ぶりに温泉に入る。

平日の日中だから、それほど混んではいない。広い野外のスペースがあって、そこにタイプの違う露天風呂が並んでいる。丘の上の林に囲まれた場所だから、眺望があって気持ちがいい。雑木林の中に裸で寝転んで湯に浸かっている気分になれる。

自分のフィールドの自然の中で、それと一体化しているような感覚だ。青空をこんなにじっくりと見上げて、空の深さを実感するのは、露天風呂に入るときくらいだろう。

一年ぶりに高村光太郎の「秋の祈」が口をついて出てくる。昨年にしっかり覚え直したから、突っかかるところがないのが嬉しかった。

かけ流しのお湯が流れ込んでいるから、「清浄の水こころにながれ」の部分は実感がこもる。「地中の営みを自ら祝福し」では、地中深くから長い年月をかけてわきだしてくるお湯にあらためて感謝したい気持ちになった。

大空に向き合い、声に出しながら、一語一語が張り詰めて無駄のない、美しい詩句だとあらためて感じる。空は水色。秋はりょうりょうと空に鳴る。

 

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