大井川通信

大井川あたりの事ども

『とらのゆめ』 タイガー立石 1984

本屋で児童書のコーナーをながめていたら、この絵本が目立つように立てかけられているのが目をひいた。タイガー立石の新刊はないだろうと思って奥付をみると、1984年発行された本の再刊のようだ。「こどものとも」という30ページばかりの月間雑誌の一冊である。

読んでみると、さすがタイガー立石。夢をみているトラが、ぐうぐういいながら夢の世界を歩き回るというだけのお話しだが、とにかく突き抜けている。

夢の世界でのトラは、緑色の縞模様で、スイカに変身したり、増殖したりする。途中赤い縞模様のダルマにもなるのがご愛敬。画面にはいつも遠く水平線が一本ひかれていて、抽象的な美しさがあるのは、シュールレアリスムの絵画のようだ。

タイガー立石(1941-1998)は福岡県の筑豊田川市の出身で、だいぶ前に田川美術館で回顧展を観たことがある。地元の香春岳と、セザンヌのモチーフのサントヴィクトワール山とを大画面で競わせる張り合わせるような絵もあって、どれも面白かった。若いころは、僕の好きな中村宏さんと「観光芸術協会」を結成して活躍したこともある。

ネットで調べると、今大規模な巡回展の最中で、おそらくその関係もあって再刊されたのだろう。うかつにも知らなかった。来年1月まで埼玉県で開催されるようだ。年末年始の休みで、ぜひ行ってみたい。

 

 

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