大井川通信

大井川あたりの事ども

気を取り直してヒラトモ様・ミロク様に初詣する

腰痛も峠をこしたようで、朝暗いうちに起き出して宗像大社に詣でる。まだ車も人もそこまで多くない。コロナ禍以降境内から締め出された夜店の数は少なく、かつて調査した東京ケーキの屋台も来ていない。次男が特等を当てたこともある新春の福みくじを二本引くが、二桁等級に沈む。

ジョイフルに寄って、本を読んだり計画を立てたりするが、お参りのせいか昨日までよりかなり快調だ。そうだ、今日を元日と思って、やりたいことを詰め込もう。家に戻って準備してから、杖をついて大井に出ていく。

切り株の目立つ和歌神社を参拝し、先日嫌ごとを言ってしまった自治会長さんにも元気に新年のあいさつ。里山の入り口の民家で掃除するご婦人に声をかけると、「トノミネ様にお参りですか」と。地元ではトノミネ説もかなり有力(ひろちゃんもそう呼んでいた)で、ヒラトモ様研究には大切な事実だからメモしておこう。

山頂に着くと、まずはヒラトモ様のホコラの掃除。軍手で落ち葉を払い、お神酒を替え、お供えの木の根を並べ直す。この後は新春のお祭りだ。まずは、ヒラトモ様の由来を説いた紙芝居を、ホコラに向けて上演する。そのあとは、平家物語の知盛の最期を読み上げる。最後は、ベンヤミンの歴史哲学テーゼのいくつかを朗読する。

今月のベンヤミン読書会にむけての予行演習の意味もあるが、和洋、硬軟とりまぜたからヒラトモ様もきっと退屈しなかっただろう。

帰りは里山の中腹を回って、大正4年「御大典記念林」の石碑あたりから峰にそってくだっていく。この急坂はシダに占拠されて歩きにくく、二度も尻もちをついてしまった。ミロク様もすっかり草木に埋もれている。お神酒を替えてお祈りしながら、もう今後お参りできなくなるかもしれないことの断りをいれる。ミロク様の記録を残し記憶をつなぐことの決意をあらたにする。峰をおりた辺りにある山中の滝には、水はほとんどながれていなかった。

ようやく下山すると、集落の家々には見かけない車が止まり、子どもたちの姿も見えて活気がある。正月の帰省なのだろう。こちらもあたたかい気持ちになる。