大井川通信

大井川あたりの事ども

猫のけんか

職場の窓から見える林には、ときどき近所の猫たちの散歩する姿が見える。いろいろな柄がいるし、大きいのも小さいのもいる。

今日突然、大きなうなり声が聞こえたので、窓の外をのぞくと、二匹の猫が向かいあっている。鳴いているのは茶トラの猫で、相手の白猫は声をださない。

初めはなぜか横を向いてうなっていた猫も、まっすぐ顔を向けて、だんだん顔を近づけると、鼻と鼻がくっつくくらいになった。窓を閉めた室内にまで聞こえる声だから、かなりの迫力なのだろうが、白猫は意に介さないという風情で相手を見すえている。

この状態が10分以上続いただろうか、よく見るとうなり声をあげている猫がわずかでも相手につめよって、白猫があとずさりはしないまでも身体を曲げて耐えているのがわかる。チンピラの「ガンの飛ばしあい」みたいなもので、ひくにひけないメンツみたいなものがあるようだ。(ちなみに、「ガンを飛ばす」のは関東で、関西では「メンチを切る」と言うようだ)

そんななか突然お互いとびかかったが、一瞬組み合っただけですぐに分かれて、また同ようなにらみあいにもどってしまった。5分くらいたって、白猫がゆっくりと向きを変えて、振り返らずに歩いていってしまう。それを見送る茶トラ。白猫の姿が完全に消えると、茶トラも歩き出した。

形の上では白猫が譲ったみたいだが、茶トラにあれだけうならせて一歩も引かなかったのだから、ずっと見守っていた審判役からすると、引き分けとしたい。かえって白猫の精神力の方が目立っていた気がするし、猫の世界のルールの上で、白猫の方にも納得のいく成果があったから、悠然と退場していったようにも思える。

いずれにしろすごい迫力だった。茶トラには首輪があったので飼い猫ではあるようだが、修羅場を生きる外猫は強い。

我が家の九太郎は、いまだに後からきたボンちゃんが気に入らないらしく、ちいさくうなることがあるが、まったくかわいいものだ。とはいえ、家猫の中にもああいった激しい野生の本性は潜んでいるのだろう。それをわかって接してあげないといけないと思った。