大井川通信

大井川あたりの事ども

『すてきな 三にんぐみ』 トミー・アンゲラー 1962

今参加している読書会主宰のニコさんが、ずいぶん前、紹介形式の読書会を企画したことがあって、その時彼女が紹介していた本。

絵本は立ち読みですぐ読めたが、「愛蔵ミニ版」という手のひらサイズを見つけて、気に入ったので今回購入した。絵本は本来大きな紙面で読んだ方がいいのだろうが、こうした小さいサイズに惹かれるのは、ミニチュアとかガチャガチャとかの小さいオモチャが好きなことと共通しているのかもしれない。

ただ、ミニサイズで読んでも魅力が伝わるのは、原作のもっている絵の力だろう。内容も、面白い絵本の要素がつまっていて、あきさせない。

まず、おそろしいどろぼう三人組が主役だという、価値観の逆転。

山高帽をかぶり黒いマントをはおって、ほぼシルエットだけで描かれる、三人の没個性ぶり。三人を区別する破天荒な武器。

みなしごのティファニーちゃんとの出会いをきっかけとして、突然はじまる三人の善行。みなしごたちが、全員、赤帽子と赤マントなのがかわいい。こちらの没個性。

三人組に救われたみなしごたちは、結婚し、子どもを育て、村をつくり、村は発展する。村人は三人を記念してトレードマークの山高帽に似せた塔を三つ建てたというラストで、ストーリーに急に歴史的な奥行きが加わる。

実は村の始まりを語る伝説だったというオチが鮮やかだ。大人の本にはない、大きなふくらみを持った絵本だと思う。