鈴木のりたけ(1975-)は、『ねるじかん』で知った。そのあと、本屋や図書館などでいくつか作品をのぞいてみた。達者な人で、いろいろなパターンの作品を描いていることを知る。ただ人物の顔立ちとかキャラクターの描き方とかで、感覚的になじめないところがあって、僕には『ねるじかん』を超える作品には出会えなかった。
本作は、書店の「こわい本」のコーナーに平積みされていた作者のデビュー作。手足の生えたケチャップの容器が主人公で、ハンバーガーショップで働き、古いアパートで地味に暮らしている。
唯一の事件は、トメイトウはかせという頭がトマトのお客に、ケチャップの中身を吸われ続けたため、博士の頭が爆発して、町中がケチャップの洪水となってしまったということ。しかし事件がおわれば、ケチャップマンの平凡な毎日は変わらない。シュールではあるが、ストーリーの説得力は今一つだ。
ただ、ちょっと暗めでリアルな絵がとてもいい。キャラも人物も気持ち悪さはあるが許容範囲だ。商店街がケチャップであふれている見開きの絵は、細部を見るのが楽しい。
作者は一橋大を出てJR東海に入社したもののグラフィックデザインを学び直し、デザイナーを経て絵本作家になったという異色の経歴の持ち主。