大井川通信

大井川あたりの事ども

高本裕迅の基礎英語2

僕が中学生の頃は、HNKラジオの「基礎英語」と「続基礎英語」が、ネイティブの発音に触れる唯一といっていい機会だった。あと、中学教師が授業で使うラジカセのテープの音声。先生たちの発音はおせいじにも上手とは言えなかった。

両講座の内容は中学生には難しく、僕も途中で挫折したと思う。ただ英語学習はラジオという刷り込みのためか、その後、大学や社会人になってからも、時々は未練がましく「ラジオ英会話」や「ビジネス英会話」などを聞いたりしたが、英語はいっこうに上達しなかった。

長男が中学生に入って勉強の手助けをしないといけなくなったとき、まっさきに思いついたのは「基礎英語」の受講だった。今から思えば当時はすでにラジオの学習は主流ではなかっただろうが。

僕の子どもの頃とは違って、基礎英語は学年別の三つの講座になっている。長男がどれくらい真面目に勉強したかは別にして、毎月のテキストとCD教材を買って、僕も自分の勉強のためにそれをできるだけ聞くようにした。

中でも中学二年生むけの講座を担当する高本裕迅(こうもとゆうじん)先生のキャラが立っていて、講座の内容もフランクで異色だった。主人公のアイちゃん一家がハワイに引っ越して様々な経験をするというストーリーも、できるだけリアルにつくってある。お母さんがお洒落で耳にピアスの穴を開けようとしたり、アイちゃんがちょっとした誤解からボーイフレンドから浮気を疑われたりする場面もあった。

おそらく中学2年の教えるべき内容をはみ出した単語や語法も含んでいたと思う。中学3年生で教科書的な講座に戻ったときに、急にレベルがさがったように感じたから。

あれから14年。久しぶりにCDを取り出して、通勤の車の中で時間をかけて1年分の講座を聞きなおしてみた。高本先生は相変わらずパワフル。女性の登場人物のセリフの和訳の女言葉も役者のようで艶やか。アイちゃんたちも、ハワイでのドタバタを繰り返している。なにも変わらないというのはいい。僕のヒアリング力の壊滅的なダメさも変わらないままだが。