大井川通信

大井川あたりの事ども

父の子守歌

ねんねんころりよ/おころりよ/ぼうやはよい子だ/ねんねしな

 

室生犀星の詩集を読んでいたら、「おころりころりをうたへり」という詩句があって、初めは何のことか見当もつかなかったが、すぐに有名な子守歌のフレーズだと気づいた。さて「おころり」っていったい何だろう。

父親から聞いた話。

幼児だった僕を眠らそうとして、添い寝の父親がこの歌を歌うと、「おとうさん、そんなさみしいうたをうたわないでよ」といやがったらしい。子ども心にこの歌の哀調を感じ取ったのだろう。

若かった父親の面影はさすがに薄らいでいるが、父親が声低く歌う子守歌の調べだけは、今も耳元に響いている。もちろん、幼かった僕が聞いた調べそのものというよりも、後年、何度もこのエピソードを繰り返すときに父が歌ったものが耳に刻まれているという方が真相に近いだろうが。

今日は、父親の98回目の誕生日。