大井川通信

大井川あたりの事ども

大井川桜紀行

桜が満開で、すでに散り始めている。空が荒れ渡っているので、近所の桜を見てあるくことにした。桜は、やはり青空に映える。

僕の住む住宅街の向かいの病院のある丘は、ぐるりと桜が植えられている。その先の交差点も、桜の街路樹が並んでいる。花見の時期になって、こんなにも桜が多いことに気づく。もはや、サクラ多すぎ問題といえるのではないか。

わざわざ桜の名所といわれる場所に行く必要がないのはいいが、土地の個性がそれだけ失われてしまうということだ。それに、桜の若木は、桜の魅力を十分に伝えているとはいいがたい。

桜の花は、枝を前後左右に大きく張った樹形の全面に咲いてこそ、その美しさを堪能できる。それは十分に成熟した木でないといけないし、樹皮が割れて奇怪にくねった老木ともなると、そこに美への妄執さえ感じることができる。

そんな特別に美しい桜の木は、思いつく限りでも何本しかない。大井に向かう街道に立つ一本桜は見事なランドマーク。街道の先にある大木は、建設会社の敷地整理とともに昨年無残にも切られてしまった。大井の薬師堂の桜は、小ぶりながら美しい。シゲン神社の参道の桜並木は、目立たないながら落ち着いた桜の名所となっている。

庚申塔が撤去されたタグマの路地近くで、小ぶりで見事な桜の老樹を見つけたのが収穫となった。来年からは楽しみに見にこよう。

足を伸ばして、カトウ天満宮の桜(このあたりでは新しい桜の名所だ)を期待して見に行ったが、こちらは整備してまだ日が浅いためか、若木ばかりで迫力がなかった。