大井川通信

大井川あたりの事ども

『ないしょのおともだち』 ビバリー・ドノフリオ(文) バーバラ・マクリントック(絵) 2009

「おんなのこ支持率NO.1 ときめき100%」と帯に大きく宣伝文句が書かれていて、ふつうだったら手に取ろうとは思えない絵本だったが、持ち込みOKの書店カフェの気安さで目を通してみると、どうしてどうして、これがとてもよい本だった。

思わずこの絵本を購入したし、続編は日本版ではなく、英文の原書を手に入れるほどほれ込んでしまった。

大きな家に住むマリーという女の子と、その家の片隅にあるネズミの家に住むネズミの女の子とが、ふとしたきっかけで友達となり、二人が家を出て新しい家に移り、お互い母親になって、子どもたちの世代になってもその友人関係が引き継がれるというストーリーだ。

何がそこまでいいのか。

人間の女の子の暮らしと、ネズミの女の子の暮らしとが、まったく対等のものとして、同じていねいさで描かれているのが心地いいのだ。二人の暮らしは、見開き頁の左右や、上下の分割で、対比的に描かれている。当然、擬人化されたネズミ一家の暮らしが愛くるしくて、見飽きない。女子の人気はそんなところにもあるのだろう。

そうして交わることのない二つの世界が、ふとした偶然で交わり、二人が視線を交え、あいさつを交わす瞬間が訪れる。この瞬間が、なぜかとても感動的なのだ。そしてこの瞬間の感動が母と子の二世代で引き継がれる、という設定もとてもいい。

小動物との交流を描いた絵本は多いが、おそらくその白眉といえる傑作だろう。