大井川通信

大井川あたりの事ども

『夢のあもくん』 諸星大二郎 2022

諸星大二郎さんの新作短編集が届く。しかも二冊も。とちらも全て初見の作品ばかりだ。諸星ファンならば、それだけで満足するべきだろう。しかも『夢のあもくん』の方は、僕の好きな現代の日常を舞台にしたホラーだ。

「給水塔」という作品がよかった。近ごろは給水塔の写真集などが出ているくらいだけれども、街の中のさりげない異物をテーマにして、それが移動しているのではないか、という諸星大二郎ならではの特異な発想を軸にストーリーが展開する。ラストのオチも、スマートだが恐い。

諸星さんは、僕の大井川歩きにとって名誉顧問とも呼びたい存在だ。ヒラトモ様の里山を見ながら大井を突っ切る街道を、僕は諸星さんと同じ車に乗って走った。これは僕には奇跡としかいいようのない出来事だった。

諸星さんの作品を大井周辺の様々な事物に関連づけて読むという課題を、僕はまだ果たしていない。僕より一回り年上の諸星さんがこれだけの創作をしていることが、僕には励みになる。