大井川通信

大井川あたりの事ども

原田可菜人さんの新詩集

大井川の堤を歩いて原田さんを訪ねると、村の賢人は、座布団の上で昼寝をしている。納屋を改造したギャラリーは、風通しが良くて気持ちがよさそうだ。

四分冊で出すという原田さんの新しい詩集の一冊を購入して、さっそく目を通すと、その内容に驚いてしまった。身近な人の才能に圧倒されることはめったにない。近くで接すると、どんな人間でも五十歩百歩の平凡な存在に思えてしまう。ところが原田さんは時々、有無を言わさぬ大きな姿で迫ってくる。賢人たるゆえんだ。

10代の頃からの思想的遍歴のなかで、原田さんは自ら詩を生み出し、その言葉を道しるべとして生きてきた。深い思索の力と言葉のセンスがうかがえる作品だが、文語調が基本の詩は若い人には近づきにくいかもしれない。

原田さんは、中年過ぎて書を学んだ。もともと絵心のある原田さんは、墨の絵と文字を自在に組み合わせて、自作の詩を絵解きするような独自の書画作品を、この数年精力的に生み出し続けている。70歳前後でのまったくの新境地には驚くほかない。

今回の詩集は、活字の詩とそれを絵解きする書画とが、見開きのページに収められている。自作解説の小文も加えられて、相乗効果で紙面からみずみずしい世界が立ち上るようだ。

僕が何より感心するのは、原田さんの生活力であり仕事力である。誰だって人間関係や生活の面で立ちいかなくなるときがある。原田さんはそんな時、投げ出すことなく黙々と手仕事に打ち込む。納屋の改造もそうだし、今回の詩集の制作もそうだ。それが見事に次の一歩につながっていく。言葉と思想と生活が一体となっているのだ。

 

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