大井川通信

大井川あたりの事ども

『当事者主権』 中西正司 上野千鶴子 2003

「全世界の当事者よ、連帯せよ」の言葉で締めくくられる、とても熱い本。障害者運動の中西と女性運動の上野という、経歴の異なった両者の思いと知恵が叩き込まれた共著だというのも、その熱さの由来だろう。

ただ、こうした本だからこそ、僕は自分の「当事者性」に立ち返って、ひとまずは自分の経験を尺度にして読むことにしよう。

僕が、学生時代、障害者の自立生活運動に触れたのが、1980年代の初頭であり、この運動の黎明期だった。そこから20年の成果がこの本で語られている。この本が出版されたころには、老舗の当事者運動の後退期・衰退期にかかわっていたこともあって、この本の熱さにはついていけず、結局積読のままだった。

出版から20年近くたって、僕も仕事で当事者の問題に新たなかかわりをもち、ようやくこの本を手にとってみた。出版の頃は幼児だった次男も、障害の当事者としての経験を積んで社会人として働いている。

だからこの本以後の20年の当事者運動の経験が気になるところだ。この本では介護保険の施行が大きなトピックとなっているが、僕も昨年には介護職員初任者研修を受講し、介護保険と介護現場の現状について学ぶことができた。

80年代には、上野さんのフェミニズムには大きな刺激を受けた。その後も、講演や著書で彼女の仕事には触れ続けてきたが、ここにきてその思想の全体に向き合う必要を感じている。