大井川通信

大井川あたりの事ども

銅像ぐるぐる

僕の実家の近所には一橋大学があって、今のように校舎が整備される前だったから敷地に余裕があり、公園兼野原兼林の子どもには絶好の遊び場だった。

国立大学の伝統校だから、キャンパスのあちこちに、功労者の銅像がある。林の奥には高い石の台座の上に立つ立像があったから、子どもの頃その周りをぐるぐると回って、追いかけっこをしたりして遊んだ記憶がある。

今の職場の前には、立派な都市公園があって、池や築山や花壇や林や周回路を備えている。こちらの方がさすがに整備が行き届いているけれども、一橋大学のキャンパスにどこか似ている雰囲気があって、僕は以前から昼休みに歩き回るのを楽しみにしていた。

ここにも銅像があるが、その規模は大学の比ではない。亀山上皇日蓮上人の巨大な銅像で、日露戦争の時期に建てられているから、元寇を意識したものだろう。今は県庁の建物で眺望をさえぎられているが、像の視線は真直ぐに玄界灘を見据えている。

この二つの像も台座の周囲を回れるようになっている。先日何気なく公園の話を妻にしたら、公園の近所で育った彼女は、いとこたちと一緒に遊びに来て、二つの銅像の周りをぐるぐる駆け回った思い出があるという。この公園が、彼女にとって僕の一橋大学みたいな場所だということを知って、ちょっと不思議な(別々の時空間が不意にクロスするような)気分になった。

しかし銅像があったらぐるぐる回るのは、どこの子どもでも共通なのか。