大井川通信

大井川あたりの事ども

『熟語公式で訳す英文解釈問題集2』 篠崎書林 1993

高校の英語の授業は、当時、リーダー(読解)とグラマー(文法)とコンポ(作文)に分かれていた。といっても、みんなでそう言い慣わしていたからそう呼んでいただけで、授業の中身がきちんとその言葉通りに切り分けられていたわけではない。

教科書は指定されていたが、授業ではあまり使わず、プリントや副読本の問題集のほうをよく使っていたのも、教科の区分があいまいになる原因だった。その頃の都立の平凡な進学校だった母校は、学校の姿勢としても教員の仕事ぶりもそれほど熱心でも意欲的でもなかった。

たしかナンバ先生のリーダーだったと思うけれど、うすい英文読解の問題集を使っていた。構文の例文と解説のあとに問題が三つほど。以前は主流だった英文解釈の参考書のスタイルだけれども、当然ながら解答はない。基本編の問題集が終わると、次には、問題文の難解になった問題集がまっていた。どこかの原典から抜き出した一文は、文脈なしに突拍子もない内容だったりして、予習の訳文づくりに苦労した記憶がある。

高校の授業で使った二冊の問題集は紛失してしまったが、卒業後10年以上経ってから、書店でそれとそっくりな問題集を見つけたので、喜んで購入した。これは販売用に模範解答もついているし、きれいなカバーもついているが、中身はまちがいなく同じだろう。

それから20年。やさしい方の問題集は、カバンの中でペットボトルのお茶をこぼしてダメにしてしまった。間抜けな僕らしい。

残った難しい方の一冊を、気分も新たに通勤電車の中で通読する。旧式の勉強法だから、たいして役に立たないかもしれない。でも、もう効果とか効率とかはあまり関係ない。たんなるノスタルジーとしても、やりたいことをやるだけだ。