大井川通信

大井川あたりの事ども

「奇天烈」林間散歩

今の職場の前には大きな都市公園があり、アスファルトの周遊路がめぐっている。昼休みにそこをジョギングしたり散歩したりする人もいる。

しかし、その道は日差しがきついし、通勤時にその一部を歩いているから面白みがない。だから僕は、周遊路の内側の芝生や林や築山の木陰を縫うようにして歩くことに決めている。

よく整備された林の中は風が通り抜けて気持ちが良い。枯葉やドングリや木の根を踏んで歩くのも、アスファルトよりは膝にもいいだろうし、足裏に微妙な凸凹や傾斜を感じながら歩くと、五感が解放されるような気がする。

都市公園の鳥たちは人間になれているし、林の中を低く飛びかう姿は、街中で見ることはできない。最近、スズメバチに出くわすことが多くなったが、縞模様の太い胴体が不意に目の前に出現したときには思わず緊張が走る。

実は10年以上前に今の職場で働いているときも、昼休みの気分転換で、この林間歩きを編み出していた。ただ当時はまだ若かったから、小走りで身体を鍛えたりしていたけれども。

それで今回も得意になって、すでに一か月以上この散歩を続けている。ところが今日、あることに気づいて愕然とした。今の職場には数千人の勤務者がいるだろう。昼休みに都市公園に出てくる人も多い。しかし、この一か月、明らかに僕と同じ林間歩きをしていると思われる人に出会ったことがないのだ。

林内にも小道がついているし、立ち入り禁止の場所ではないから、ルール違反をしているわけではない。しかしおそらくたいていの人にとって、想像外の振舞いなのだろう。これもまた、奇想・奇天烈たるゆえんか。