大井川通信

大井川あたりの事ども

ブリキのおもちゃ

少し以前の話だが、先月の吉田さんとの勉強会で、食玩のブリキのおもちゃのミニチュアを持参した。その前の月に横山光輝の漫画のキャラの食玩を紹介して盛り上がったことに味を占めたものだ。

もう二十年近く前になるが、食玩(玩具がおまけについたお菓子)を買い集めていた時期があり、かなりのコレクションになっている。もちろん背景知識の点で吉田さんに敵うことはないが、それを勉強会の場で紹介しつつコレクションの整理を兼ねることができる。吉田さんに譲れるものがあれば、有効活用にもなる。

今回のテーマはブリキのおもちゃなのだが、駄菓子屋のスペシャリストというべき吉田さんは、意外なことにブリキのオモチャには縁がなかったという。たしかにブリキのおもちゃは、子どものお小遣いでは手が出せない「高級品」だったかもしれない。

僕自身、幼児期に買ってもらったブリキのおもちゃは二つしか思い浮かばない。一つは鉄人28号で、ゼンマイで前に進むことができた気がする。もう一つは、天井からヒモで吊るしたゼロ戦で、ゼンマイのプロペラを回すとぐるぐるとその場で旋回した。

食玩のミニチュアには二種類あり、当時のブリキのおもちゃを同じ材質で小さく作るものと、プラスティックで再現するものだ。質感は前者だが、細かい再現は後者でないと不可能だ。

一番のお気に入りは、当時の鉄人のブリキのおもちゃを正確にプラスティックで再現した作品だ。原型がブリキだから、実際の鉄人からずいぶんとデフォルメされている。身体が角ばっているし、頭部も大きすぎる。しかし、今の僕にもこれは問題なく鉄人に見えるのだ。子どもたちの見立ての力と想像力が、おもちゃの再現性の甘さを軽々と補っていた時代だったのだと思う。