大井川通信

大井川あたりの事ども

ビブリオバトル再考

もう一か月以上前になるが、地元のビブリオバトルでバトラー(プレゼンター)として参加した。オンラインではなく人前で本の紹介をするのは、コロナの影響で、二年半ぶりになる。初めてチャンプ本(バトラーの紹介した本の中で参加者全員の投票で決められた「一番読みたい本」)に選ばれたのだが、やはり悪い気はしなかった。

ビブリオバトルという方法は、実際に体験してみると、想像していたよりもずっと優れているという感想は以前にも書いたと思う。バトル(競技)という形をとっているために、時間管理やルールが厳格で公平になって、運営もスムーズになる。バトラーの緊張感がプレゼンをより面白いものにするし、投票や質疑応答やアンケートによって参加者の参画意識や手ごたえも確保される。投票基準がプレゼンの良しあしでないため、投票結果に対してバトラーが傷つくことも少ない。

オンラインも含めて何回かバトラーを務めて、バトラーとして必要な視点について考えることができた。そのことをメモしてみよう。

本の紹介型の読書会でもそうなのだが、本を紹介する場合、どうしても人は自分が面白かった本を選びがちになる。自分にとって大切だった本だったり、無意識であっても自分がこういう本を読んでいるとアピールしたい方向の本であったりもする。

ただ同時に、その本の紹介が、老若男女の幅のある参加者の誰にとっても多少とも「役に立つ」ものである必要があるだろう。バトルで勝つという目的は別にしても、貴重な時間を割いてくれている参加者に対する礼儀といえる。

そうすると自分が面白いと思った本の中にある、普遍的な価値みたいなものを取り出して、それを参加者に対して示すことができるか、が本を選ぶ基準となる。参加者全員の関心事でどこかで触れる本であるという確信がなければならない。

だから5分間のプレゼンでやるべきことは、本の中の普遍的な価値や共通の関心事へと参加者の注意を向けることだ。僕の場合、前半の二分程度は、参加者との共通の文脈づくりにあてるようにしている。実生活の中のどんな関心からこの本に出会う場面が出て来たかの体験談みたいなものを話した後に、初めて本を取り出すのだ。

今回は、参加者が多く、バトラーあてのアンケートが読み応えがあった。基本的には褒めてくれる内容だから、これもとてもうれしい。

 

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