大井川通信

大井川あたりの事ども

教祖の息子

ある新宗教の教祖の長男が、ネットの動画配信者となって教団の暴露をしている。3年ばかり前からのことだが、今回初めていくつかをまとめて見てみた。

組織の内情の暴露といっても、単なる関係者と、教祖の家族しかも後継者として嘱望された長男とでは重みが違う。なかなか聡明そうでユーモアがあり、あとくされなく離別の決断をした彼の言葉には嘘はなさそうだ。

教団にとっては大きなダメージだろうが、こうしたものが個人によっていとも簡単に発信できるのが、ネットの力だ。かつて社会変革の理想を抱いていた世代にとって、情報テクノロジーの進展が中央集権化の方向だけではなく、個々人の力量の拡大に結び付くというのが一つの理想像であったはずだ。しかし実際に実現すると、それはカオスでしかなかったが。

もともとサークル組織だったものを、無税を目的として宗教法人になったこと。長男は徹底した英才教育をうけて東大法学部の現役合格を目指したが、そのコースにのれなかったために後継者候補から外れ、教祖夫妻の離婚の遠因となったこと。父親(教祖)の学歴信仰の理由は、学歴以外に何も誇るものがない人間だったからだと一刀両断される。

長男が失墜すると、残りの兄弟姉妹で、後継者を目指す権力争いが勃発する。教義では輪廻転生の考え方が重要だが、家族を含む幹部たちの「前世」も、その時々の教祖との関係でめまぐるしく「設定変更」される。

霊言という憑依芸が教祖の売り物だが、霊言の前には教祖は一生懸命その人物の資料に目を通していたそうだ。(余談だが、最近田村正和の霊験が出版されていてさすがにあきれてしまった)

どれもこれも、あまりにも予想通りで俗っぽく救いようがない。ただし、しょせん我々不完全な人間のすること。そんなものなのだろう。

 

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