大井川通信

大井川あたりの事ども

人間ドックの風景

新年度を迎えると、職場では健康診断がある。雇用主の法令上の義務なのだが、それよりも検査項目の多い人間ドック(一日ドック)を自費負担で申し込むことがある。体調に不安がある中年が過ぎてからは、かかりつけみたいな遠方の同じ病院で人間ドックを受けることが多くなった。

受付で、検尿や検便を提出し、ロッカーで検査着に着替えると、血圧や採血検査、身長体重、視力、聴力、心電図、レントゲンという風に、検査項目ごとに各コーナー・各部屋を順番に回っていく。メインはバリウムによる胃の検査で、これは手ごわい。最後に医師による問診があるが、これは流れ作業的で、形式的な感じだ。

何十年も検査を受けている間に、病院側の対応もずいぶん改善してきている印象がある。今は当たり前に思えるようになったが、親切で丁寧な対応になったとき感激した記憶があるから、以前はもっとぶっきらぼうなものだったのだろう。たまたま不慣れな病院で検査してしまったときなど、素人のようなミスにがっかりしたこともあった。

ところで、今年退職して健康保険組合が変わったので、検診(一日ドック)で選べる病院も豊富になった。リストをみると、我が家から歩いて数分の病院にも、立派な検診センターがある。

早速申し込んで予約日に出かけて、何度も利用したことのある救急センターの二階にあがると、そこには、何十年も見てきた「人間ドックの風景」があった。検査着に着替えた人たちが、順番をまって、あちこち巡回している。

それどころか、今までの病院以上に対応がいい。胃通しの検査でも説明や段取りが的確だし、検査機械にも利用しやすい工夫がある。最後の問診も、血液検査の結果をみながらの内容の濃いものだった。

病院の検診センターの建物は、我が家の窓から見通せるほど近くにある。年に一回の特別な空間での祝祭めいた出来事が、日常の暮らしの鼻先で行われていることを知って、なんだかとても奇妙な気分になった。