大井川通信

大井川あたりの事ども

『ごろりん ごろん ころろろろ』 香山美子(文)・柿木幸造(絵) 1984

『どうぞのいす』の3年後に描かれた続編。登場人物たちも、みんなが集まる岡も同じだけれども、岡の上の木が切られて切り株になっている。これには何の説明もないけれども、その理由を推理するのは楽しい。

こんどは、ウサギがかなり大きな丸テーブルを作っている。できあがると荷車にのせて岡の坂をひいていくのだが、木材を組み合わせたテーブルはウサギ一匹にはかなり重い。ところが、どんどん荷車が軽く感じられるようになる。

ロバとキツネとクマと十匹のリスが、次々と黙って荷車を押すお手伝いを始めたからだ。ウサギは最後にはとても楽になって、岡の上の切り株の椅子の隣に丸テーブルを設置する。動物の仲間たちは、それぞれこのテーブルでやりたいことを話し出すのだが、椅子が一つでは、明日困ることになるだろう。

ウサギは黙って岡を下りると、徹夜で人数分の椅子を作って、翌日には丸テーブルのまわりに並べておいてあげる。岡に上った動物たちは、全員が木の椅子に座れたから、切り株の椅子が一つ余ることになる。

「まーだ どうぞ、だれかさん」というのが最後のセリフで、この絵本が「どうぞのいす」の続きであることがはっきりする。

岡の上の木が切られたのは、きっと木工好きのウサギさんが使う木材にするためだろう。丸テーブルもおそらく、この木材が生まれ変わったものだし、切り株は、誰かさんのための椅子として利用される。そんな循環がしっかり描かれているのも頼もしい。