山川出版社の日本史リブレットシリーズの一冊で、100ページくらいのブックレットだが、中身は濃い。大井川歩きの基本書の一つというべき良書で、今回は再読になる。
地元を歩くと、どうしても神社と民間信仰の問題にぶつかる。そうすると、国家神道の負の歴史にふれないわけにいけないし、国家神道でも、現世利益の身もふたもない信心でもないところに神をめぐる思想の可能性を求めようとすれば、江戸末期以来の民衆宗教の系譜に目をむけざるをえないだろう。
実際、地元にも、天理教や金光教、黒住教などの教会がある。大本教に深くかかわりを持った人が建てた神社も残されている。
もちろん民衆宗教も国家神道の体制の中で、様々な妥協や背信を余儀なくされた面もある。それら全体のアウトラインをわかりやすく解説してある本で、本当にありがたい。
僕も大井川周辺に着地して、そこを拠点にした生き方、考え方に打ち込みたいと考えているが、そうなると、ベースとなる思想は、西洋の哲学や東洋の仏教でもなく、もっと素朴で芯のある民衆宗教の思想ではないかと思い始めているところだ。この本を貴重な手掛かりに考えをすすめていきたいと考えている。