大井川通信

大井川あたりの事ども

カラスと会話する(三日目)

今日は仕事が忙しく、昼休みは遅れた仕事を片付けたいところだ。ただ、明日から五日ほど職場にこないので、カラスに忘れられてしまうのではないかという不安もある。

それで意を決して公園のいつもの場所にやってきたのだが、今日は人が多い。遠くにいるカラスを鳴きまねして呼び寄せるには勇気がいる。と思っていたら、スーッと横から飛んできて、低い枝にとまったのは、あのカラスだ。

と言っても、見れば見るほど真っ黒なカラスというだけでなんの特徴もない。ただ、羽根も身体つきもなめらかで若いカラスだというのはわかる。そもそも敵意なく、またエサにつられているわけでもなく、人間の近くにやってきて逃げないのは、あのカラスと考えてまちがいないだろう。

いったい今日はどんな挑戦をしてくるのだろうと身構えると、今日はいたって普通の鳴き方をする。しかもしっかりした声量で。三日目にして初めてだ。

カアー、カアー、カアーという感じ。ただ、こちらが鳴きまねで同じ回数だけ繰り返すのを待って、タイミングよく鳴いてくるというやりとりはいつもと同じだ。

何回かやりとりしたあと、カラスは近くの高木の枝に移って、木の実のようなものを食べ始める。僕はその下までついていき、そこでもまっすぐに見上げて、カアーカア―合戦をまた少しやる。

今日はこのくらいでやめないといけない。こちらは面白いカラスを見つけたと思っているが、向こうでは変な人間を見つけたと思っているのだろう。来週また会えるといいのだが。