大井川通信

大井川あたりの事ども

古建築写真を整理する

僕のようなライトな古建築ファンにやれることは限られている。入門書や解説書をできるだけ多く読むこと。多少背伸びして専門書にも手を出してみること。現地に出かけて実物と対面すること。建物を味わいつつあれこれ思案し、メモを取ったりスケッチをしたりすること。もちろん写真も撮る。

写真は建物内外の細部の造形についても撮っておいて、あとからアルバムに整理するときに自分なりの解説を書き加えるようにすれば、古建築の知識と鑑賞の力が身につくだろう。昔からそう思いつつ、写真は撮りっぱなしで、アルバムのポケットに順番に並べて入れているのがせいぜいだった。

しかし、近年、ありえないことに宮大工の見習いみたいなワークショップに参加して部材をいじることができた。そのときお世話になった建築士の方から、解体した建物の組物(平三斗)をいただくこともできた。極めつけは、今回の円覚寺舎利殿である。

このうえは、やれることはすべてやって、念願の禅宗様建築ノートを書き上げてしまおう、という気持ちになった。積読本も順調に読み進めている。

それでようやく写真の整理に取りかかったが、80年代の写真が大半だ。90年代の写真も多少はあるが、今世紀になってからはデジタルデータのせいか、プリントした写真はあまりない。モノクロの正福寺地蔵堂や高倉寺観音堂の写真は中学か高校の時にとったものか。70年代の京都・奈良の修学旅行の写真はすっかり変色してしまっている。

およそ30年以上もほったらかしにするとは、古建築ファンの名折れだろう。それでも「好きこそものの上手なれ」で、どの寺院のどの建物の写真であるかは、メモ書きなどなくとも何となく頭に入っている。撮影時の状況も覚えていたりする。それらの情報を再利用の古いアルバムの余白にざっと書き加えつつ、写真の整理を進めていく。