大井川通信

大井川あたりの事ども

ご近所トラブルを収束させる

11月の終わりに、妻が隣家の奥さんからケヤキの落ち葉のことで苦情を受けた。長男の幼稚園時代からの付き合いだけれども、感情が爆発したみたいな様子だったという。それを聞いて、何年もわたって相当不満をためてきたのではないかと想像できた。

妻も混乱して、すぐに謝りに行ってくれと言ったり、いくら何でもあのいい方はないと言ったりする。ただ、今顔を見せても火に油を注ぐばかりだろう。いくらこちらに非があっても、きつく言われたら気分が悪いし、言わざるをえなかった側も気を病むことになる。こんなことをきっかけに、交際断絶なんてことになりかねない。ずるいようだが、冷却期間を置くことにした。

まずは反省を言葉でなく態度で示すこと。指摘されたとたん、手のひらを返して可能な限り落葉が隣家の前を汚さないようにした。目につく時間に他人の家の前の掃除をするわけにいかないので、暗いうちの朝5時過ぎに起きて道路に散らばった落葉の掃き掃除。夜にももう一度。

散りつくすまで半月くらいかかったが、これで落葉の掃除がいかに大変かが骨身にしみた。しかも隣家だけでなく、かなり広範囲に迷惑をかけていることを実感した。内心不満をため込んでいる人も別にいるかもしれない。だとしたら、今回の隣家からの指摘には(未然に?村八分状態を回避させてくれたという意味で)むしろ感謝しなければいけないことになる。

葉が散りつくしてから、頼んだ業者の都合がついてケヤキを三分の一ほどに切ってもらった。もともと予定していた剪定なのだが、我が家の態度をご近所にきっぱりと示すことにはなったと思う。

隣家からクレームが入ってから落葉が出る半月間は(遅きに失してはいたものの)近隣に迷惑はかけず、さらにそれから一か月がたった。我が家が方針を改めたことには満足しているはずだし、十分な冷却期間があった。のど元過ぎればなんとやらである。

隣家の奥さんからしてみれば、隣人に声を荒げてしまったことのしこりが残っていたと思う。このタイミングで、朝の通勤時に車を出す奥さんと顔を合わせる機会があった。あの「事件」以来、僕がお隣の家族に会うのは初めてだ。

僕は、無精者ですみませんという自虐を交えて、今までの落ち葉の不手際をしっかりわびた。これには、この一か月半の実績と冷却があるために、奥さんもこころよくわびを受け入れてくれた。一方奥さんの側からも、「私が言いすぎたので、奥さんに謝りたい」という言葉をかけられた。

こちらが150%悪いことだから、本当だったら謝る必要のないことだし、当時は先方もそう思っていただろう。しかし、冷却期間中に亢進した気まずさのために、それを何とか晴らしたいという思いが奥さんに起きたのだろうと思う。

この奥さんの謝罪のおかげで、直接面罵された妻の方もその不満や反感を収める方向に舵を取ることができそうだ。もともとこちらが悪かったのだし、ご近所だから「水にながそう」と話している。

ご近所トラブルはこじらせると大変だ。先月も埼玉県飯能市で一家三人の命が奪われる不幸な事件が起きている。それを回避する生活の知恵の大切さが実感できた出来事だった。