大井川通信

大井川あたりの事ども

『くるくるかわるねこのひげ』 ビル・シャルメッツ 2014

ビル・シャルメッツ(1925-2005)はアメリカのイラストレーターで、原作は1969年の出版。騒然とした時代を背景としているせいか、はちゃめちゃで楽しい絵本だ。

原題はシンプルに「ねこのひげ The Cat‘s Whiskers」。帯に「待望の復刊!」とあるから調べると、1985年に一度翻訳出版されている。その時のタイトルは「とてもかわったひげのねこ」だったようで、今回の方がいいだろう。

立ち読みで手に取ったのだが、欲しくなって買ってしまった。そういう絵本はなかなかない。真っ赤な表紙と自在で達者なデッサンを見ていると楽しくて、手元にあるだけで元気が出てくるのだ。

猫のひげが自由自在に伸びて、いろいろな形をつくって、女の子と遊んだり、事件をまき起こしたり、というストーリーなのだが、猫のひげの線が走りまわり、転げまわり、暴れまわる様子はとても魅力的だ。その予想不可能な動きは、確かに猫のふるまいにも共通している。

「線の哲学」みたいな本が面白そうで、買って積読のままになっている。こんど読んでみよう。線はどこまでも伸びて、見知らぬ場所に連れて行ってくれるし、曲がったり、回ったりすることで形をつくり、内と外の境界を引いたり、それを破ったりする。線というものの不思議と魅力をぞんぶんに味あわせてくれる絵本だ。