今さら、ラーメンに衝撃を受けるとは思っていなかった。
あれほど美味しいと思った家系ラーメンも、どの系列店でもその味を再現してくれない。昔好きだった喜多方ラーメンを東京帰省時には、しつこく食べてみるもののどうもピンとこない。かつては美味しいと思った一風堂ラーメンも近くに出来きたチェーン店の味は、あまりにも平凡だ。
結局、僕にとっての地元ナンバーワンを争う、身近な暖暮ラーメンとらう屋ラーメンが安定した美味しさを提供してくれるから、それで満足しようと思ってきた。この二店を超える特別に美味しいラーメンなど存在しないのだと。
何も僕がラーメンを究めたなどといいたいわけではない。僕の食体験は、年齢の割にきわめて乏しい。なんでも美味しく食べるという幼少期の食育によって、味覚が分化発展してこなかったために、この先新しい美味しさをとらえることはできないとあきらめた結果の認識である。
にもかかわらず、ここに来ての、トマトラーメンだ。以前からその名を聞いてはいたが、仕事の帰りにたまたま入ったお店で、その美味しさに飛び上がってしまった。
次の休日には、ドライブの途中によって妻と二人で食べたが、美味しさの印象は変わらずに、替え玉までいただいた。妻にも好評で、僕は大得意だ。
ただし、妻が「トマト味のスープスパゲティにラーメン麺を入れたみたい」と安易に解釈したことには、少し憤慨したけれども。
いや、このラーメン、そんなもんじゃない。
