大井川通信

大井川あたりの事ども

痛みの連鎖

一か月ばかり、右足の膝のあたりに違和感がある。何かの拍子にちくりと痛むような気がして、歩くときに気になってしまう。普通に歩いていて実際に痛むようなことはないのだが、無意識に膝を気にしていて、それをかばっているのか、やや不自然な歩き方になる。

少し片足を引きずっているような気がするのだが、歩き方を意識すると、どれが「自然な」歩き方なのかがわからなくなるのが不思議だ。それで、なんとかくぎくしゃくとした歩行を続けている。

数日前に、背中の筋を痛めた。左の肩甲骨の内側で、いつも同じ場所を痛めているような気がする。原因はいわゆる首の寝違えみたいなものなのだが、痛みは首からつながった背中の真ん中あたりに出るのだ。

鈍痛とでも言うのだろうか、ずっと付きまとって、やるせなくなるような嫌な痛みだ。幸い、数日でこちらの痛みは消えた。

すると今度は、右腕の上腕の筋肉が痛み出した。仕事が繁忙期なのでパソコン作業が多い。部位からして思い当たるところはそのくらいだが、今まであまり痛めたとこるがない部分のような気がする。

バンテリンを塗ったりして、こちらも鈍痛をやり過ごす。ただ、こうしてあちこちの痛みを気にしているうちに、いつの間にかスタスタ歩いている自分に気づいた。膝から小さな違和感のタネが消えたわけではない。注意を向けるべき痛みの箇所が目まぐるしく変わり、何が何だかわからなくなってしまったのだ。

おそらく人間の身体は、無数の刺激の複合や連鎖にあいまいに向き合い・慣れあいながら、習慣の力で押し切って、自然体の態度や動きを維持しているのだろう。

などど感心しつつ、とりあえず気になる痛みはないなと安心すると、今まで意識していなかった耳鳴りが急に蝉時雨のように聞こえだした。