そこには長い地下道があって、その中を歩き回ることができた。雨の日も快適に運動できるからいい。僕の家の近くにも地下道がつくられているが短いものだ。ここはもともと地下鉄か何か路線のあとを利用したものだから、新規で作るコストは必要ないのだ。うらやましい。本当はこの地下道の近くに家を持てばよかったと思う。
地下道の出入り口は駅の無人改札みたいになっていて、定期をかざすことになっている。しかし僕の定期はうまく反応せずに警報が鳴りだした。すると改札機の中で固定されて、身動きがとれない。何らかの不正が行われたと認識されたのだ。
すると、背後から電車が近づく轟音が聞こえてきた。それは地下道の壁の向こうを通り過ぎたかと思うと、いきなり僕の目の前に、思ったよりはるかに小さい警備ロボットのような車両が飛び出してきて、僕に銃口を向けた。
これはダメだと思ったが、駆け寄ってきた係員が確認すると、僕の定期券は別に不正利用というわけではなかったのだ。たまたま地下道が利用できるギリギリの日程で作成されたものだという。
僕は解放された気安さからか、近づく轟音に比べて警備車両があまりに小さく身軽であることのギャップを面白おかしく指摘した。係員たちも笑顔でよくそう言われますと答える。