大井川通信

大井川あたりの事ども

京都精華大学セット

大井の古民家カフェ村チャコの小川さんの息子さんが、京都精華大学に進学することが決まったらしい。ジュンノスケ君のことは、中学生の頃からよく知っているから、お祝いに何か贈りたい。それで、手持ちの蔵書から、この大学の先生の本をセレクトして渡そうと思った。

精華を選んだきっかけの一つは、白井聡が教えていることのようだ。それで、まず、彼の『未完のレーニン』。ベストセラーになった『永続敗戦論』は僕には肌に合わなくて、ずいぶん辛辣なレポートを読書会でしたことはあるけれど、レーニン論は面白かった。

次は、佐々木中の『足ふみ留めて』。佐々木中が登場した時には、とんでもない書き手が現れたと思った。ただ講演会を聞いたときに、芝居がかった表情で虚勢をはる姿に文筆家の楽屋裏を見せられたような気がしてゲンナリした記憶がある。

ジュンノスケ君が面白かったという内田樹からは、『知に働けば蔵が建つ』。内田はどの本も、あざといくらいに面白く鋭い。

現役の教員ではないけれども、京都精華大学のイメージがある上野千鶴子からは、『ナショナリズムジェンダー』。精華時代の初期の本がいいのだろうが、懐かしくて手放せない。

何よりマンガ学部板橋しゅうほう先生の本を贈りたいところなのだろうけれども、コレクションを精選して、『アイ・シティ』と『セブンブリッジ』しか手元になく、とてもゆずるわけにはいかない。ただ、『アイ・シティ』はぜひ読んでほしいと伝えよう。

僕の貧しい経験を振り返ると、これらの本(『アイ・シティ』はのぞく)を読んだからといって、何かの役に立つわけでも、それで人生が豊かになるわけでもなかった。ただジュンノスケ君には、きっと別のやり方、別の生き方が開かれているだろう。若者に幸多いことを祈る。