大井川通信

大井川あたりの事ども

本の話

人文系書店店主との対話

前回エンドレスエイトを使って打ち合わせなしの寸劇を演じた書店の店主のもとへ再度赴く。九月も半ばというのに、35℃くらいはある。早めに津屋崎についたので、はじめて蔵屋敷の路地に足を踏み入れる。安部さんのお墓にもお参り。 店主に今日の日付を確認し…

書物は水に弱い

また、やってしまった。3年ぶりの二度目である。 妻の通院の送り迎えで、医者の近くのショッピングモールで待ち合わせをしていた。無料休憩所だから、ペットボトルのお茶を飲みながら、本を読む。 妻が医者から戻ってきて買い物をすませたので、僕はカバン…

これから楽しみに読むシリーズ

夏風邪療養中元気回復企画第3弾。 こういう時は、前向きにお楽しみな計画を考えるのが一番。療養はもう終わってしまったけれども、書き残したメモで記事にしておこう。 ・まず、ハルヒのラノベシリーズを全巻読むこと。現在11冊中3冊読了。特にアニメ化され…

エンドレスエイト突入の日に人文書について考える

体調もだいぶ良くなったので、津屋崎に出かける。安部さんの文集の整理をしていて、もう少し在庫の活用をしたいという気が起きたのだ。ネット情報で、旧玉乃井で書店を開いた若者がいるらしい。10冊ばかり渡すことができたらと訪ねたのだ。 さいわい営業中…

『父・こんなこと』幸田文 1949/1950

父の書棚シリーズの第一弾。幸田文の『木』を読書会で読んだことをきっかけにして、1955年初版の新潮文庫版を購入してみた。今は幸田文は再ブームの渦中らしく、雑誌ユリイカでも特集されている。 父の書棚の文庫本がわずかだったが、子ども心に印象に残って…

父の書棚の本を読む

父は読書家だったけれど、幸田露伴張りの身辺整理の哲学を持っていたようだから、小さな家にふさわしく居間に一つの書棚を置いて、それに収まるだけの蔵書しか持たなかった。だから、古書店への売却はたえずだったし、書棚に出たり入ったりを繰り返す本もあ…

ゴーゴリ本と謹呈用紙の思い出

学生時代、早稲田の古本屋街を巡回するのが好きだった。その時手に入れた本で今でも持っているのは少しだけだろう。まっさきに思い浮かぶのは、学習研究社版世界文学全集(全50巻)のうち、1978年発行の第35巻『ゴーゴリ』だ。 子どもの頃からゴーゴリが好き…

『あるく武蔵野』 横田泰一 1976

子どもの頃の蔵書の復元が完成したと豪語したばかりだが、ここにきて欠けていた重要なピースを手に入れることができた。 50代になって、さも新しく発見したかのように「大井川歩き」を唱えているが、その原型は子どもの頃の武蔵野(多摩)歩きにあった。すっ…

姉弟の『武蔵野風土記』

多摩歩きのガイドブック『武蔵野風土記』を手に入れたことで、僕の子ども時代の蔵書再構築プロジェクトはほぼ完成した。本の汚れ等に敏感な僕の場合、ただ集めればいいというのではなくて、一定程度の「美品」であることも大切だ。こんなことができたのもネ…

『武蔵野風土記』 朝日新聞社編 1969

国立駅前ロータリーから南東方向に伸びる旭通の端に近いところにあるユマニテ書店で、とうとう目当ての本を見つけることができた。書名がわからずに探しあぐねていた本だ。実は相当前にこの書店で古びたこの本を見つけたことがあったのだが、おそらくその時…

ヤングアダルト本研究会を見学する

数年前、図書館司書の資格のための勉強をして、YA(ヤングアダルト)本というジャンルがあるのを知った。日本語の語感からは、何を表しているかはわかりにくい。簡単にいうと、中高生くらいをターゲットにする本の総称だ。 子どもの本というと、やはり小学…

勁草書房の哲学思想論文集

大学では法学を専攻したが、当時の専門書や教科書はほとんど捨ててしまった。趣味の哲学思想関連本の方がまだ多く手元に残っている。 今回、橋爪大三郎の『仏教の言説戦略』(1986)を読んで、勁草書房のA5版の単行本シリーズが、当時の僕には別格の重みが…

「意識高い系」読書会

今月の吉田さんとの勉強会は、僕の方は菅孝行の自伝がらみで特に映画会社時代のエピソードを報告したが、吉田さんからは最近参加した読書会についての感想メモの提出があった。読書会については僕はいろいろな経験をこの場で話題にしてきたが、吉田さんから…

実践発表型ビブリオバトル

初めて主催者側として、ビブリオバトルの運営の手伝いをした。バトラーや観戦者としてだけでなく会場設営などのボランティアをしたことはあるが、運営側となるとまた別の経験となる。もっとも仕事としては様々な研修会の主催や運営側に立つことも多かったの…

あの紙の輪回しを教えてくれたのは・・・

子どもの時の懐かしい本はこれだけで終わり、と断言してしまうと急に不安になる。あわよくば見つけたいと心に引っかかってきた本が、もう一冊くらいはあるのではないか。 大人になってから本屋さんや図書館で、子どもの工作の本の書棚の前にたちどまって、背…

あの多摩歩きのガイドブックは・・・

福音館小事典文庫の「ことわざ辞典」も手に入れて、いよいよ僕が執着する子ども時代の本も少なくなった。何度も思い出して懐かしく思うような本は、もうあと一冊、といっていい。 僕は今、大井川歩きと称して地元歩きをやっているが、振り返ってみると、子ど…

「福音館小事典文庫」と再会する

僕は本好きなのにも関わらず、子どもの時の本をほとんど処分してしまった。これは同じく本好きであるにも関わらず、蔵書を本棚一箱に厳選していて、本を整理するのが趣味だった父親の影響、というかほとんど強制による。学校の教科書はおろか、子ども向きの…

安部文集が届く

納期よりかなり早く安部本が届き、思わず声をあげる。 表紙の紙質とデザイン、そして巻頭の肖像写真とその印刷が秀逸だ。この外側の部分にプロの手が入っているために、見栄えがちがう。 白い表紙の中央より少し上目に薄いグレーの大きな長方形が横に置かれ…

本を速攻で処分する

定年前の二年間、ある事務所の所長を務めたとき、自分には読書くらいしか武器はないのだからと、仕事の関連本をひたすら読んだ時期がある。それを自分の執務室の書棚に読了順に端から並べていった。 読了本を背景にして仕事をするのは、自信にもなったし、多…

図書館サービス特論レポート(2020年3月提出)

2019年度に近畿大学の通信教育部の図書館司書コースを受講した。なんとか単位をとって資格を取得したのだが、一番苦労したのが、タイトルの科目のレポート課題だった。 「身近にある公共図書館を観察し、課題解決支援サービスの内容・特徴を述べるとともに、…

『手品と奇術の遊び方』 大野萬平 1973

永岡書店の実用百科シリーズの一冊。 古書店を見ていたら、店外に置かれてる棚の本のなかに見覚えのある背表紙のこの本を見つけた。手に取ってみると、装丁も挿絵も記事もみな懐かしい。僕が小学6年生の時の出版だから、まちがいなく手品のマイブームのさな…

『タダの人の思想から』 小田実対談集 1978

石原慎太郎(1932-2022)が亡くなった。石原は思想的に合わなかったし、それもあって見た目とか態度とかも好きになれなかった。短編を一つ読んだくらい。 ただ、高校時代に出会ったこの本では、小田実(1932-2007)との対談に強烈な印象を受けた。他に宇井…

『ほんの話』 白上謙一 1980

今はなき社会思想社の現代教養文庫から、大学時代の思い出の一冊を再読する。 著者の白上謙一(1913-1974)が、勤務先の山梨大学の学生新聞に1962年から1971年までに連載した読書案内をまとめたものである。扱われる書物の幅の広さと辛口で小気味良い文章に…

図書館で本と出会う

『市民の図書館』の中に、こんな記述があった。誰もが、図書館の書棚で無名の著者の書物に出会い、その面白さに驚いたことがあるだろうと。 たしかに図書館では新刊書中心の書店には置かれていない本があって、しかも無料で気軽に借りることができるから、読…

『機械の図鑑』 小学館の学習図鑑シリーズ24 1962

以前から、少しずつ子どもの時の蔵書をネットで見つけては買い集めている。整理好きの両親の影響があって、それらはすべて処分してしまっていたからだ。 小学館の学習図鑑はなつかしい。僕は当時から、本を読むことより、本をながめることが好きだったのだと…

『偕成社/ジュニア版 日本文学名作選』 全60巻 1964-1974

僕が子どもの頃、おなじみだった赤いカバーの近代日本文学のシリーズ。ポプラ社にもよく似たシリーズがあったけれども、偕成社版が本物のような気がしていた。やや小ぶりだけれども厚めのハードカバーで、江戸川乱歩シリーズやホームズやルパンのシリーズと…

『小学館/少年少女世界の名作文学』 全50巻 1964-1968

実家の隣の従兄の家にあった子供向け文学全集。 僕たち姉弟は、隣の家を図書館がわりにしていたから、このシリーズにもだいぶお世話になった。僕は拾い読み程度だったけれど、本好きの姉は全巻を通読していたのではないか。 一冊がかなり大きく分厚い本で、…

『初心者のための天台望遠鏡の作り方 屈折篇』 誠文堂新光社 1967

子どもの時の懐かしい蔵書シリーズ。ブルーの地味な表紙の薄い本と、再会を果たせて感無量だ。 1940年生まれのエコノミスト野口悠紀雄さんの本に、子どもの時、天体望遠鏡を自作したことが書いてある。おそらく、1950年代には、レンズ等を購入して、あとは自…

『科学の学校』 岩波書店編集部 1955

五巻セットの本が届く。箱はだいぶ古びているが、中身はきれいで思ったより状態がいい。長年心の片隅にひっかかっていた本を手にして、感無量だ。 敗戦後まだ10年の年に出版された子どもむけの科学の本。各巻は「宇宙と地球」「生物と人間」「物質・熱・光」…

『世界の戦闘機』 秋本実 1969

勉強会仲間の吉田さんに、近頃子どもの時の本を集めているという話をしようと思って、たまたま届いたばかりのこの本を持参した。すると彼の目の色が変わる。吉田さんもかつて飛行機好きの子どもだったのだ。それでしばらく、スカイホークやらイントルーダー…