大井川通信

大井川あたりの事ども

「福音館小事典文庫」と再会する

僕は本好きなのにも関わらず、子どもの時の本をほとんど処分してしまった。これは同じく本好きであるにも関わらず、蔵書を本棚一箱に厳選していて、本を整理するのが趣味だった父親の影響、というかほとんど強制による。学校の教科書はおろか、子ども向きの単行本は全滅である。一番古い蔵書がすでに文庫本だ。

ネットの古本屋やオークション、メルカリが全盛のありがたい世の中がやってきて、簡単に状態のよい古書を手に入れることができることに気づいてから、僕は子ども時代の思い出を取り返すのに夢中になっている。

僕は本好きとはいっても、乱読するような読書家ではないし、家の経済的事情からも蔵書は少なかった。それで運よくたいていの懐かしい本は手元にコレクションすることができた。ただ名前がわからないと探しようがない。

文庫本より一回り小さくてスマートで、肌色のビニールカバーがかかっていて、極端に小さい活字で、ことわざ辞典や学習事典などのラインアップがそろっていて、子ども時代の勉強机まわりのおなじみだった、あのシリーズ。

僕の少年時代の思い出のベストオブベストといえるへびゴマの発見に沸き立った僕は、その余勢でこのシリーズを見つけてやろうと決意した。へびゴマを手に入れた僕にできないことはないのだと。

そうしてネット界隈の探索に本腰をいれて、「福音館小事典文庫」というシリーズ名を突き止めた。今では絵本で有名な福音館が、1950年に刊行を開始し、1987年までに段階的に終息させたシリーズだと会社のホームページにはある。

僕の記憶では、最後のころ(たぶん1980年代)には水色の紙の表紙に一新していたはずだが、終息の時期はなるほどそのあたりだろう。80年代に入り消費(浪費)が奨励されるような時代に入って、紙資源の節約を地で行く本シリーズは戦後の貧しい時代の遺物になってしまったのだろう。

当時の定価130円よりも安い落札価格で手に入れたのは『学習人名事典』。帯には、「各教科の学習に必要な人名約1400名収録」とある。1959年が初版で、1969年発行の16版。補充カードも挟んだままで全く使用された形跡のない美品だ。こんな種類の学習事典があったのはぼんやりと記憶している。

ところで、この記事を書くまですっかり忘れていたが、僕がこのシリーズで一番お世話になったのは、たしか姉の所有物だった『ことわざ辞典」とともに、『芭蕉・蕪村・一茶句集』だったと思う。古い俳句に初めて親しんだのはこの本だった。いつか手に入れてみたい。