2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧
いくつかの手記で構成されている小説という形式のためもあるのだろうが、主人公の男の自分語りがえんえんと続く。理系らしいモノのディテールの対するこだわりと、際限のない論理癖。系統的に読んでいるわけではないから確かには言えないが、安部公房の後期…
子どもの頃の蔵書の復元が完成したと豪語したばかりだが、ここにきて欠けていた重要なピースを手に入れることができた。 50代になって、さも新しく発見したかのように「大井川歩き」を唱えているが、その原型は子どもの頃の武蔵野(多摩)歩きにあった。すっ…
僕はずっとペットを飼ったことがなかった。だから、子どものいない夫婦がペットを可愛がっているのを見た時など、子どものかわりに、あくまでも本物のかわりの偽物として、やむなくペットを飼っているのだろうと漠然と感じていた。 失礼な感想を抱いていたも…
高校生の時に、年賀はがきを配達するアルバイトをした。子どもの頃に遊んだ近所の路地にくまなく入り込んで配達するのが面白かった。何年かしてから、その時仕事を教えてくれた郵便局職員のお兄さんの太って変わり果てた姿を見てショックを受けたことをなぜ…
ヒラトモ様には初詣をすませてあるので、大井の里山の中の別の神様に、お参りに行く。人の出入りがない場所なので、ヒラトモ様以上の難所である。先週末に雨が続いて、道がぬかるんでいるのも誤算だった。 まず、近頃気になっている秀円寺の裏山の石仏にお参…
中学生のビブリオバトルでチャンプ本となった本で、その縁で読書会の課題図書になった。作品そのものを成立させるアイデアというかネタがすべての小説であるので、ネタバレが前提というところで感想を書く。 おおざっぱに言うと活字の配置が前頁同じ(正確に…
ふと書棚のこの本が気になってカバンに入れて持ち出し、朝のファミレスで読んでみた。ページを開くのは20年ぶりくらいだろう。 池田晶子(1960-2006)は、僕と同世代の哲学系の書き手だ。といっても研究者ではなく、哲学の思考そのものを生きた人といってい…
近頃は、双眼鏡をもって散策することがなくなったばかりでなく、短眼鏡を失くしてしまって、往復の通勤時に鳥を見つけることもまれになってしまった。こんなことではいけないと思いつつ。 駅までの通勤路で、街なかにあるため池の名前は新池という。冬場で水…
読書会の課題図書だが、100頁にも満たない作品だから、ブックカフェで読み切ってしまい、購入しなかった。もともと、こうした芥川賞受賞の話題作を読むのは苦手で、読書会への参加にも後ろ向きになっていたところだった。 ところが、そういう悪意の先入観を…
ある僻地の学校を視察することになった。電車で目的の駅に行き、そこから歩いて数キロの場所だ。学校の敷地は細長く建物も貧相だったが、この地域の資力ではこれが精いっぱいだったのだろう。近隣のいくつかの集落が校区になっているが、そのうちの一つは性…
多摩歩きのガイドブック『武蔵野風土記』を手に入れたことで、僕の子ども時代の蔵書再構築プロジェクトはほぼ完成した。本の汚れ等に敏感な僕の場合、ただ集めればいいというのではなくて、一定程度の「美品」であることも大切だ。こんなことができたのもネ…
先週は井手先生がご不在だったので、今週またお伺いする。一つには、本日が先生の誕生日なのでお祝いをすること。新年に提出した金光教レポートの一頁目の日付がたまたま昨年の今日だったことに先生が少し驚かれて、それでたまたま誕生日を知っていたのだ。…
玄関の脇に、大きなキャリーバックが置いてある。明日、妻が天神のお店にスペースを借りて小物を出品するからその準備だろう。思ったより大きなバックなので、持ち上げてみるとかなり重い。これはまずい、と思った。 かなり前から明日の出品は自分で電車にの…
昨年11月からは、しつこい風邪に悩まされた。咳と淡と鼻の炎症がすぐにぶり返す。検査では一応陰性とはいえコロナだったかインフルエンザだったか、直前にうったコロナワクチンの副作用だったかわからない。年齢による衰えも含めて複合的なもののような気が…
「天日はありがたいに相違ない。またこれがなくては生命はない。生命はみな天をさしている。が、根はどうしても大地に下さねばならぬ。大地にかかわりのない生命は、ほんとうの意味で生きていない。天はおそるべきだが大地は親しむべく愛すべきである。大地…
鈴木大拙の『日本的霊性』が面白かった。本書が提示する「日本的霊性」の概念はなかなか魅力的だ。著者も、具体的にわかりやすくその内容を説明している。煙に巻くような感じではない。説明の道具立てもシンプルで、繰り返しすこしづつ角度を変えながら照明…
中央公論社の「日本名著」の一冊で清沢満之を読んだついでに、ふと併せて収録されている鈴木大拙の『日本的霊性』を読んでみようと思った。 鈴木大拙(1870-1966)が清沢よりもはるかにビッグネームで多くの著作があって国際的に評価されていることは知って…
僕はどう考えても文系人間のくくりに入ってしまうが、数学や科学に対するあこがれはある。科学技術が光り輝いていた60年代に幼少期を過ごした人間の共通感覚だろう。だから、数式を使わずに「考え方」で数学を説明する画期的な本が面白かった畑村洋太郎の…
いつもより早めだが、二月は逃げるというので、三連休の中日に行橋に向かう。今回は初めて井手先生が不在だった。ただ、広前には先生の奥様が出てきて座ってくださる。奥様とのエピソードはいろいろお聞きしていたので、いつかはお話をしたいと思っていたと…
読書会の運営について、僕はメンバーの一人に熱弁を振るっている。 僕の理解では、つまりこういうことですよね。詩集の課題図書について、それを芝居仕立てにして三人の女性で報告しようとした。ところが、そのうち二人が当日参加できなくなって、会が流れて…
駅から自宅までの帰り道は同じ道を歩くことが多いが、途中で病院の敷地内を通り抜けることもある。病院は岡の上にあって、いつも歩く道はその周囲を迂回しているので、多少ショートカットにはなるのだが、階段を上り、坂を下らないといけない。樹木も多く公…
「日本の名著」の現代語訳で、久しぶりに清沢の『宗教哲学骸骨』を読み直してみる。初めて読んだのは、今村先生による現代語訳の文庫本だった。こんな風に宗教を、というか世界を語ることができるのかと驚いた記憶がある。 今読んでも、その簡潔でスキのない…
以前の職場の部下の結婚式に招待される。スピーチや乾杯の音頭などの役割のない結婚式は気楽だが、その分緊張感がなくて物足りなくもある。仕事関係で結婚式に呼ばれるなどというのもおそらくこれが最後だろう。そもそも若い人も減り、結婚自体も減り、フォ…
絵本で近頃の収穫は、なんといってもヨシタケシンスケだ。書店で平積みになっている何冊かをめくって、いいなと思った。 昨年末の中学生のビブリオバトルでバトラーの女の子が取り上げて、それに対して大学生のボランティアがヨシタケ作品を好きだといって質…
人生の中で「奇蹟」と思えることは、超自然的な現象というものより、得難い人との出会いだろう。誰でも友達を6人たどれば、全世界の人に行きつくという現象(スモールワールド現象、6次の隔たり)こそ、その奇蹟の客観的な表れである。 多くの人は、日常で…
春の競馬シーズンまでは日にちがあるが、それでも重賞クラスのレースは関心を持ってみている。この時期には短期免許で新しい外国人ジョッキー短期免許で来日するから、その騎乗ぶりも楽しみ。 昨年の注目株はカザフスタン出身のムルザバエフジョッキーだった…
もう10年以上前のことだが、いろいろな場所にモノを置き忘れることが続いた。たまたま以前に大きな記憶障害を経験したことがあって、記憶についてはある程度勉強していた。正確な名称は忘れたが、短期記憶の中で、自分のふるまいを無意識に短時間保持して置…
清沢満之が一般の読書界に広く知られるようになったのは中央公論社の日本の名著シリーズの第43巻(1970)で鈴木大拙とともにとりあげられたのがきっかけだと聞いているが、そのペーパーバックス版(1984)を僕は手元に持っている。 ぱらぱらとながめていて…
乱暴者の元同僚Kさんが、華やかな展示会の会場に乗り込んできた。ホテルの一階のホールのような場所だった。展示会に恨みをもつKさんが、暴力で会場を破壊しようとしたのだ。僕はその場にはいたが第三者のような扱いで、乱入したKさんとも普通に言葉を交…