大井川通信

大井川あたりの事ども

結婚式に招待される

以前の職場の部下の結婚式に招待される。スピーチや乾杯の音頭などの役割のない結婚式は気楽だが、その分緊張感がなくて物足りなくもある。仕事関係で結婚式に呼ばれるなどというのもおそらくこれが最後だろう。そもそも若い人も減り、結婚自体も減り、フォーマルな式をする人も減った。

新郎は、今は生まれ育った地元で小学校の先生をしているが、地元の友人を大切にする「マイルドヤンキー」的なところがあって、よくからかっていた。

ずいぶん前だが、大晦日の日に近所の激安スーパーで、地元の仲間たちと買い出しをしている姿を見たことがある。食材やお菓子や飲み物を買って、友達の家に集まって騒ぐのだろう。本人は、おそらく仲間内ではおぼっちゃまで勉強のできる存在なのだろうが、友達には本物のヤンキー風だったり、化粧もばっちりの女性もいて、なかなかバラエティに富んでいた。同質でないというのが地元の友達の良さだ。

結婚式でも、地元の友人たちが主役で、仲間で余興を受け持った。スピーチしたのは、小学校以来の親友だ。小学校に入学して、同じ鉛筆を使っていることから友達になったというエピソードは可愛らしい。明るく話していたが、原稿を持つ手がちょっとふるえている。(こういうとき周囲はほとんど気に留めていないのだが、本人はスピーチの出来が気になるものだ。あとでMVPでしたねと声をかけたら喜ばれた)

高校のバスケ部の友人、大学のバレー同好会の友人、以前の職場の仲間たち、そして今の小学校の同僚。「リア充」全開の人間関係が垣間見れて、とても楽しい会だった。一方、故郷を捨てて、学生時代の友達とのつきあいもない自分を振り返ると、ちょっと寂しいようなうらやましいような気にもなった。でも、それは自分の生き方の反映だから仕方がない。

それに今ネット社会だから、かつては表に出ることもなかった「マイノリティ」のリアルな声を聞き、勇気づけられることもある。恋人も友人もいないような生き方をしている人もいくらでもいるのだ。人生いろいろ。

結婚式の翌日、新郎から感謝の電話が入って、楽しく話ができた。主賓の時だって、こんな電話を受けたことはない。さすがの気配りだ。ただ昔からギャグセンスが合うためか、慕ってくれているような気もする。実家が土地持ちの彼に、こちらが食い詰めたらどんな仕事でもするから雇ってください、といういつもの冗談をいって電話を切った。