大井川通信

大井川あたりの事ども

フィールドノート

須恵村訪問記(その5 白髪岳と月明学校)

球磨盆地をとりまく山々で、市房山はそれとわかる厳しいシルエットを持っているが、白髪岳の方は、意外にもなだらかで穏やかな稜線を見せていて、人に教えてもらうまでわからなかった。盆地から見るかぎり大きなお饅頭のような山容は、クルソン峡の険しいイ…

須恵村訪問記(その4 市房山を遥拝する)

市房山は標高1721mであり、球磨盆地の最高峰としてその東端にそびえている。『須恵村』を読むと、この地方の神聖な山である市房山に関する印象的なエピソードが描かれている。 3月15日と16日には市房山の山頂近くの神社の大祭「お獄(たけ)祭り」があり、…

須恵村訪問記(その3 村・区・集落)

昨年、新しく全訳で出された『須恵村』を読んで、それなりにわかった気でいた。大井川歩きで地元の集落の聞き取りなどをしているから、多少の予備知識はある。今現地を見ても、様変わりした平凡な街並みや村里を見るくらいかもしれないと思っていた。 ただ、…

須恵村訪問記(その2 祈祷師の顔)

文化人類学者エンブリー夫妻の住居跡の石碑は、街道沿いのガソリンスタンドの脇にあった。覚井(かくい)の集落に入っていく小道の入り口で、小さいながら由来も刻まれていて好ましいものだった。 自宅の周辺を歩く、という大井川歩きの鉄則を応用し、ここを…

須恵村訪問記(その1 深田銅山のこと)

深田の宿に泊まったのはまったくの偶然だった。旧須恵村に隣接する地域だし、宿の名前も旧須恵村の現町名と同じだから、かつての須恵村をしのぶ旅にはふさわしいだろうと勝手に納得していた。 宿の料理や雰囲気には満足して、翌朝、いつもの習慣で宿の周辺を…