大井川通信

大井川あたりの事ども

大井川歩き(里山環境論)

大井の田んぼの中心で秋を祈る

秋の天皇賞で、世界最強と言われるイクイノックスの快勝とルメール騎手の笑顔のインタビューを見る。僕が競馬のレースを見始めてから、ちょうど二年がたったわけだ。ルメールのファンだから気分よく、日の傾いた大井川流域を歩く。 このところアスファルトの…

『カブトムシの謎をとく』 小島渉 2023

ちくまプリマー新書の最新刊。こういうタイトルの本はすぐに手を伸ばしてしまう。 僕の近年のカブトムシ体験には「謎」が二つある。この二つの謎の回答を見つけるヒントになるような記述があった。 もう5年以上前のことだと思うが、東京郊外の実家近くの緑…

鎮守の杜のナラ枯れ

遠目に見ると、真夏なのにワカ神社にすっかり枯れた木が日本目立っている。おそらくナラ枯れなのだろう。境内と裏山の樹木が10本以上、二年前に伐採された上に、かろうじて残った木が枯れてしまうとは。 境内に入って、久しぶりに樹木を観察して、驚くべきこ…

御神木と杜人

老人ホーム「ひさの」のコノミさんから誘われて、休日の朝、大社に行く。メールだけで事情はよくわからなかったのだが『杜人』の矢野智徳さんが来られるというので行ってみた。 大社の御神木が、ここにきて急速に枯れてしまった。それを知った近隣の方が、見…

映画『杜人(もりびと)』を観る

老人ホームひさのの田中好さんから誘われて、田中さんの地元の公民館の上映会に出かけた。余裕をもって出かけたつもりだったけれど、公民館の駐車場は満車の盛況で、吉田あつこさん(大井のひろちゃんの娘さん)と村瀨孝生さんの息子さんが駐車場整理をして…

里山でイノシシに出会う

ヒラトモ様にお参りしようと山に入るが、林道が相当荒れている。林業の作業のために重機で掘り進んだような林道は、人口の谷か溝のようなものだから、大雨の時に落ち葉や枝が流れ込んでしまうし、枯れた竹が倒れこんでしまう。使われずに管理されなくなった…

山頂から自宅をながめる

標高271メートルのコノミ山の山頂は、我が家から直線でぴったり3キロメートルの距離にある。視界の樹木が切り払われて、以前より眺望もよくなっているし、空気も澄んでいる。今回は肉眼での識別に挑戦して、なんとか家を目視することができた。 自宅の二階の…

コノミ山で学習する

久しぶりの聞き取りの成果と目当ての庚申塔の無事に気をよくして、バイパスを渡りずんずん前へと進んでいく。八並からの登山道で許斐(このみ)山に登り、王丸方面に下山するという大回りコースを、大胆にも選択する。 以前、この逆コースを歩いたことはある…

崖っぷちのザリガニ

馬場浦池の水が抜かれた。 何年か前、カイツブリが夏過ぎで子育てを始めたとき、水抜きで小さくなる水面から飛び立てないヒナの姿にドキドキしたことがあった。四羽とも無事に脱出できた年もあったが、可憐な二羽のヒナを小さくなった水たまりに見失ってしま…

多摩川の思い出

すこし前に多摩川の本を読んで、子ども時代の多摩川のことを思い出した。 多摩川は、実家から直線で3km近くあったから、小さな子どもにとって簡単に行ける距離ではない。それでもすいぶんなじみ深いのは、川べりに市営の清化園プールがあって、幼児の頃か…

『タマゾン川』 山崎充哲 2012

僕にとって、故郷の川は、東京郊外を流れる多摩川だ。これは多摩川で自然保護に取り組む、自然環境調査コンサルタントを仕事とする著者の本。子ども向きの本だから、わかりやすくスラスラと読めて、とてもためになった。 多摩川がなぜ、タマゾン川なのか。そ…

「山はいいよ、山は死なないから」

山川菊栄『わが住む村』から。村で育った昔の娘さんたちにとって、山へ焚き木をひろいにいくことは楽しい仕事の一つで、友達といっしょに山に遊びにいくような気分だったという。 「山はいいね。山に行って燃し木を掻(か)いてくるぐらい楽しみなものはない…

鎮守の杜、切られる

車を走らすと、あちこちの銀杏の黄葉がきれいだ。それで、休日の朝、わが大井の大銀杏の黄葉を見上げようと、久しぶりに鎮守の杜を目指した。 しかし、驚いたことに、銀杏の木がない。いや幹の三分の一くらいが残されているだけで、枝も葉も全てとり払われて…

大型種のゲンゴロウに出会う!

今から50年前の夏に、国立市谷保の田んぼで、小学生の僕は、体長一センチばかりの小さなゲンゴロウを採集するのに夢中だった。図鑑で見るような大きな黒光りするゲンゴロウは、公害問題の渦中にあった東京郊外ではすでに姿を消していたけれども。 今から16年…

カブトムシの研究

大井の鎮守の杜である和歌神社は、とても不思議な場所だ。 短い参道の先には田んぼが広がっているが、周囲には住宅があって、社殿背後の森も里山の開発からわずかに取り残されているだけだ。しかしそこがかなりの傾斜地であり、人が立ち入りにくい場所で、広…

低山の恐怖

前々回は、水落山登頂の成功し、前回は迷ったものの何とか高松山に登頂できた。できればこの二つの低山の間の縦走をしてみたい。最初の水落山登山の時にもそれを試みて二つくらいのピークをたどって、竹林の密集した谷の前で断念している。 高松山で迷ったと…

高松山で道に迷う

我が街の境界となる西の丘陵の最高峰「水落山」を征服したからには、その並びの高峰「高松山」にも登頂したくなる。雑草と有害生物の季節はもう目の前だ。週末に意地悪のように天気が崩れるが、なんとか晴れた土曜日に勇んで家を飛び出す。 高松山は200メー…

水落山登山

近ごろ、ようやく低山登山の面白みを知った。雑草が茂ると山に入りづらくなる。暖かくなるとマムシとかも出てきそうだ。今のうちに登ろうと思うのだが、週末の度にいやがらせのように雨が降る。気ばかりあせるが、こればかりはしょうがない。 マイルールでは…

平井山に登る

平井山は、大規模なソーラーパネルの設置で、頂上部を崩されてしまった山だ。木々が切り払われて、造成があらかた終わった後で、調査後の古墳の石室の見学会で登ったことがあるだけだ。 その時は人の背丈よりもずっと高い石室の立派さに驚いて、これを壊して…

大井里山身体見立ての巻

八五郎「おい熊公、お前さんとうとう大井の里山の縦走の山道を見つけたっていうじゃねえか」 熊五郎「八っつあん、さすがに早耳だね。大井林道を上がって、ため池の先の林道の終点の所から、山の斜面をのぼれるんじゃないかと、おれは密かににらんでいた。先…

里山縦走

大井の里山は東西に峰を広げているけれども、東端のヒラトモ様に上がる山道と、ヒラトモ様から中央の山頂部の三角点まで峰をたどるコースとは、何年も前に発見済みだ。西端の用山側から山に入る道が、うまく探しきれないでいた。以前一度強行突破したことが…

家から歩いて登山する(対馬見山編)

大井川歩きの流儀だと、すべて自宅から歩いて行き、歩いて帰ってこないといけない。登山といっても電車や車で出かけて、近場から目当ての山だけに登るわけにはいかないのだ。近所の里山には何とか入り込んで、ヒラトモ様やクロスミ様を探りあてたが、山登り…

ついにモズの早贄(はやにえ)を見つけました

子どもの頃から、モズは身近で好きな鳥だった。大柄なスズメのようなキュートなルックスで、タカのように狩りをするというのも魅力だった。 モズといえば、獲物を枝先などの刺しておくという早贄(はやにえ)が有名なのだが、僕はこれまで毎年モズを観察しな…

へへり峠を越える

コロナがやや収束したのと、新しい職場になれたのと、夏の暑さが終わったのと、ダイエットが本格化したのが重なって、先月くらいから大井川歩きも復活した。 コノミ山への往復(9月22日)、ヒラトモ様ツアー(10月18日)、クロスミ様経由モチヤマ訪問(10月2…

我が街の斜面緑地と山当て

僕が住む住宅街は、小さな丘の里山を造成して作ったものだ。近ごろの造成技術は進んでいるようで、土地のでこぼこを巧みに埋めて無駄なく住宅地にしてしまうから、斜面が緑地で残されることは少ない。それでも寺社やため池のある斜面にはもともとの林が残さ…

斜面緑地のこと

国立市の市長の昔の講演録を読んでいたら、国立という街の当初の設計について、こんなことが書いてあった。 国立は駅前ロータリーから三本の大通りが放射状に伸びている。大学通りは大学のキャンパスを貫いて中心軸をつくり、冨士見通りは富士山が突き当りに…

盆明けの大井村で

お盆の連休の最後の日の朝、日が上がるまえに一時間ばかり大井を歩く。 秀円寺の裏山を通ると、六地蔵前の草がきれいに刈られている。湿った地面近くをしきりにハグロトンボが飛ぶ。山門下の田んぼは、10軒ほどのモダンな建売住宅に変わっていて、タイムトン…

大井川歩きと「流域思考」

岸由二さんの唱える「流域思考」は、大井川歩きで僕が漠然と意識したり、気づいたりしていたことに明確な言葉と知識と思想を与えるものになっている。 僕ははじめ、自分が寝起きし暮らす自宅を中心にして世界を見ていこうと、そこから歩ける範囲を自分のフィ…

「『流域地図』の作り方」 岸由二 2013

ちくまプリマ―新書の一冊だから、若い人向きに書かれていて、イラストも豊富で読みやすい。けれど、真に原理的で、そうであるがゆえに真に実践的で、革命的な本だ。と、やたら肩に力が入ってしまうくらい、素敵な本だと思う。 たとえば、かつて人類の歴史を…

『国土の変貌と水害』 高橋裕 1971

令和2年7月豪雨と命名された大雨災害が続いている。先日、電車が遅れているため、次男を勤務先まで迎えにいくために、遠賀川の堤防の上の道路で車を走らせた。水かさが増して堤防の上部に迫る濁流の水面は、堤の反対側の街並みよりも明らかに高くなっている…