大井川通信

大井川あたりの事ども

『タマゾン川』 山崎充哲 2012

僕にとって、故郷の川は、東京郊外を流れる多摩川だ。これは多摩川で自然保護に取り組む、自然環境調査コンサルタントを仕事とする著者の本。子ども向きの本だから、わかりやすくスラスラと読めて、とてもためになった。

多摩川がなぜ、タマゾン川なのか。それは、現在の多摩川アマゾン川に生息するものを含む外来魚の王国となっていることを発見して著者が冗談でつぶやいた言葉が、そのインパクトからマスコミ等で広まったという事実に基づく。

今では、テレビ番組にもなっているような外来種バッシングみたいな内容だけかと思いきや、もっとずっと広い射程と熱い志をもった本だった。以下、大まかであるが、教えられた内容をメモしてみる。

多摩川の水は、羽村の取水堰で9割が飲み水としてとられてしまう。

多摩川は、高度成長期の開発によって汚されて死の川となるが、著者の経験によると60年代半ば過ぎまでは泳ぎや釣りができる状態だった。(僕が70年前後に見た多摩川の汚染は実はごく新しいものだったのだ)

多摩川の水がきれいになっていったのは、1980年代後半からだが、それは流域の下水処理場の整備による。しかし下水処理水の水温が高いために、タマゾン川化が起きている。多摩川の流量の8割が下水処理水だが、生き物にとってきれいで栄養豊かな水。

人間の身勝手で捨てられる外来種で壊される生態系を守る必要があるが、一方で著者たちは、おさかなポストを運営して、捨てられる外来魚たちの命を守る活動をしている。