大井川通信

大井川あたりの事ども

河川敷の思い出

広々とした河川敷を歩いていると、体内から河川敷の思い出がよみがえってくる。雑木林に入ると、わくわくして昆虫を探し回った気分が自然とわいてでてくるのと同じことだ。

子どもの頃、近くにある大きな川は多摩川だった。そもそも地元の街が多摩川の流れで造られた河岸段丘の上にあったのだ。街を抜け、街道を渡り、田んぼに降りたまだ先に多摩川はあって、堤防を越えると広い河川敷にテトラポットが置かれ、草原が広がり、その中をふだんの川は細くわかれて流れていた。

70年代の初頭。公害が全国で社会問題となっていた頃だ。川岸には一面、洗剤の白い泡がたまっている。そんな中で、ザリガニを捕まえては遊んでいた。ザリガニはいくらでもいたから、ずいぶん残酷な仕打ちをしていたような気もする。

今歩いているのは、街中の河川敷だから、大きな橋がいくつもかかり、駐車場や沈下橋やウォーキングコースが整備されている。しかし、ここも増水時は、激しく強い流れに飲み込まれるのだ。僕は、魚になった気がして、ちょっと息をとめる。

水面には、真っ白いおでこのオオバンが3羽泳いでいる。さっと翻ったのは、やや太めのツバメだ。腰に白い帯が目立つから、越冬中のイワツバメだろう。