大井川通信

大井川あたりの事ども

大井川歩き(理論・文献編)

『伝説』 柳田国男 1940

柳田国男(1875-1962)は、『遠野物語』等の読み物と他者による評論や解説書などを読んでわかった気がしていたが、きちんとした論文や著作は読んでこなかったことに気づかされる。戦前の岩波新書で、表記やレイアウト等が読みにくいということもあるのだが…

『思考の整理学』 外山滋比古 1983

ずいぶん前から本屋さんで平積みにされているのは気づいていたが、実際に手に取ることはなかった。今年になって、簡単な講演録を増補した文庫の新版が出たので、たまたま手にとってみた。自分が今から思考に力を集中しないといけないと考えていることが後押…

『地下水と地形の科学』 榧根(かやね)勇 2013(1992)

1992年にNHKブックスで出版された『地下水の世界』の増補改訂版。学術文庫での刊行当時、すでに大井川歩きを始めて水への問題意識があったから、購入して半分以上は読んでいたと思う。今回は、「杜人インパクト」で再び手に取って、読み通した。 面白かった…

『民俗学の熱き日々』 鶴見太郎 2004

副題が「柳田国男とその後継者たち」の中公新書の一冊。20年近い積読ののちにようやく手に取った。 宮本常一や柄谷行人の読書を通じて、柳田国男をもっと知りたいと思えたからだ。興味深い内容とあっさりとした書きぶりで、半日くらいで読み切ることができた…

丘陵を歩く柄谷行人/郊外・里山・ニュータウン

※52回目の吉田さんとの月例勉強会のレジュメ。今までの関連記事からポイントだけを取り出してA4二枚の資料とする。吉田さんは、僕の近所歩きの取組(厳密に言うと、住居のあるニュータウンを歩き出て、それまで死角だった旧集落、住民、歴史、里山、自然、…

『ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読』 今村仁司 2000

岩波現代文庫で出版された当時にすぐに読んだようで、読了日に添えて一言「よかった」とメモしている。今回23年ぶりに再読して、「さらにとてもよかった」と書き添えた。 薄めの文庫だが、第1部は「方法について」と題して、ベンヤミンの思考の方法について…

『忘れられた日本人』 宮本常一 1960

森崎和江の聞き書きを読んで、その魅力について考えたときに、次に読んでみようと自然と思いついたのが、この本だった。ずいぶん前に買って拾い読みはしていたのだが、通読したのは今回が初めてだった。通読して、解説で網野義彦が「最高傑作」とほめそやす…

『語る歴史、聞く歴史』 大門正克 2017

「オーラルヒストリーの現場から」が副題の岩波新書の一冊。自分の大井川歩きでの活動の参考になりそうだと購入して、6年間の積読となっていた。少年老い易く学成り難し。今回、聞き書きについての考察の手がかりにしようと思って手に取ったのだが、思ってい…

『人びとの自然再生』 宮内泰介 2017

タイトルの頭には、やや小さな活字で「歩く、見る、聞く」の文言が入っている。 岩波新書の一冊で、帯やカバーには本書のポイントが広告されているし、このタイトルからしてよい本であるのはわかっていた。明らかに僕の問題意識にかなう内容だ。それで、出版…

『江戸日本の転換点』 武井弘一 2015

この本も出版当時、大井川歩きに関連がありそうな本として購入していたもの。今になってようやく読んだが、想像以上に面白く役立つ本だった。大井川歩きの基本書の一冊として今後も読み込んでいく必要がありそうだ。 自宅周辺を歩いていて不思議に思うのが、…

『歴史探索の手法』 福田アジオ 2006

いかにも面白そうな本だと思って、出版当時買って少しだけ読んでいた本。ちくま新書の一冊だからすぐに読めそうなものだが、積読癖が災いして16年経ってようやく通読した。期待通りの面白さだった。 著者がたまたま見つけて気になった「岩船地蔵」(舟形の石…

『スペースを生きる思想』 粉川哲夫 1987

20代の頃、粉川哲夫(1941-)の批評が好きだった。粉川の批評本がさかんに出版されたのは、1980年代で、それ以降、ほとんど忘れられた存在になってしまったと思う。 日本の批評家を振り返る読書をする中で、久しぶりに粉川の本を手に取ってみる。初めは少し…

『わが住む村』 山川菊栄 1943

とても良い本だった。漠然と、女性社会主義者として高名な山川菊栄(1890-1980)によるものだから、もう少し堅苦しく図式的教条的な内容なのかと予想していたが、地に足のついた視点で、血の通った平明な文章で書かれていることに感心した。 それは、1936年…

希望をもつ方法

次に最晩年の『歴史の概念について』からの引用。「人類は解放されてはじめて、その過去を完全なかたちで手に握ることができる・・・人類が生きた瞬間のすべてが、その日には、引き出して用いうる(引用できる)ものとなるのだ」 この原稿は、ベンヤミンが「…

ガレキの拾い方

ベンヤミンの勉強会の準備が難航している。少しでも自分なりのベンヤミンの理解を示せればという野心をもっていたが、僕がもっているのはそれこそ断片的なイメージに過ぎず、とても専門家の前に提示できるようなものではない。そもそも参加者が聞きたいのは…

『誰か故郷を想はざる』 寺山修司 1973

角川文庫版。表題作の初版は1968年に出版されている。 寺山修司(1935-1983)のエッセイを好んで読んだ時期があって、今回ベンヤミンの批評を読んでいるときに、不意に寺山修司を思い出した。それまでベンヤミンと寺山修司をつなげて考えたことなどなかった…

『林達夫評論集』 岩波文庫 1982

久しぶりの再読。以前、林達夫(1896-1984)が気になって、何冊かまとめて読んだ時期があった。やはり、どの文章もそれなりに面白い。ただ、圧倒的にすごいという切れ味までは感じられない。もちろん、時代の文脈の違いと、そもそもこちらの教養や興味関心…

歴史の救済

僕は、本を読みながらというよりも、街を歩いたり、車を運転したりしながら、自分の思い付きをじっくりと考えることが多い。 ベンヤミンレポートに備える作業も、ベンヤミンのテクストを読むというより、自分の中に残存して生きている彼のイメージを何度も反…

私は地理が好きだった

馬はたのしい。競馬も面白そうだ。動画を見ているうちに、競馬好きだった寺山修司のことを思い出して、そのエッセイを読み返してみた。そうして、以前、熱心に寺山の本を読んでいた時期があったのを思い出した。 文庫本は何冊もあるので、パラパラめくってみ…

『暴力批判論 ベンヤミンの仕事1』 1994

岩波文庫のベンヤミン(1892-1940)の評論集の上巻。1933年の亡命までの前半生の作品からとられている。来年1月の報告までのプロジェクトの柱として、とにかく実際にテキストをできるだけ読もうとしており、まずその第一冊。 こんな機会でもなければ、つま…

働く工夫から生きた平和の思想が生まれる

小林秀雄(1902-1983)は、「平和という様な空漠たる観念」をモデルにするのでなく、「自分の精通している道」を究めることが大切だという。観念や空想を嫌う小林らしい言い方だが、とてもまともなことを言っていると思う。 1月のベンヤミン論のために、今…

『須恵村-日本の村-』 ジョン・F・エンブリー 1939

自分にとって、モノ・ヒト・コトバの三つの軸を束ねたものが「中心軸」となるだろうということを書いた。そのうえで、ここ5年以上取り組んでいる「大井川歩き」の実践が、その中心軸を生活の場において探っていくような試みだったことに気づいた。 ここでは…

『追憶する社会』 山 泰幸 2009

自分の中心軸に沿ってそれを明らかにする読書をしたいと思うが、その本を自分が心から楽しめるか、が一つの基準になる。民独学の本は、今までそれほど読んだわけではないのだが、読んだときは決まって楽しめたし、気になった本は買いためてある。 それで、積…

『子どもの道くさ』 水月昭道 2006

道くさは、「道草」だ。寄り道は「する」だけど、道草ならやはり「食う」だろう。しかし、道草をなぜ食べるのだろう。昔の子どもは、野草を食べていたのかしらん。 とここで、辞書の助けで、道草を食うのは馬であることに気づく。馬があたりまえの移動手段、…

『日本習合論』 内田樹 2020

久し振りに内田樹の本を読む。神仏習合という、大井川歩きにとってもど真ん中のテーマを扱っているからだ。相変わらず、面白い。内田樹だから面白いに決まっている、という感じもするが、そういう期待の中で本を書き続けるのはどんな気分だろう。 偶然、再来…

『日本はどこで間違えたのか』 藤山浩 2020

著者は1959年生まれ。ほぼ同世代だ。1960年代から10年ごとに日本社会の進行をコンパクトにまとめて、各時代の特色と問題点を明確に指摘する。著者の個人史も交えての論述は、僕自身の生きた同時代の解説でもあるから、興味深く、ありがたかった。 その分析の…

『記憶する民族社会』 小松和彦編 2000

民俗学の学術的な論文集を読んだのは、おそらく初めてではないか。今まで入門書や人気学者の評論やエッセイしか読んだことはなかった。 しかも、自分にはちょっとした因縁のある本である。刊行当時に興味をもって購入したが、後の蔵書整理の時に捨ててしまっ…

『地元経済を創りなおす』 枝廣淳子 2018

面白かった。今まで読んだ街づくりや地域経済の本の中でも、群を抜く面白さと説得力がある。 かつての地域おこしは、企業を誘致したり、補助金を受け入れたりすることが中心だった。とにかく地元にお金をもってくればいいと。しかし、そのお金がすぐに地方か…

マイクロツーリズムについて

今度のコロナ禍で、観光業はもっとも大きな打撃をうけているだろう。ある観光会社の代表が、少し前にニュースで「マイクロツーリズム」について話しているのが耳に残った。ネットにもその話題は出ているようだが、僕が理解した範囲を書き留めておこう。 今後…

介護と演劇(その2)

前回は菅原さんの演劇ワークショップの要点だけを書いたが、お年寄りを役者にした主宰する劇団の話もあって、さまざまに示唆的で説得力があった。 だから、すぐに記事にしたかったのだが、一か月以上かかってしまったのは理由がある。菅原さんのワークショッ…