大井川通信

大井川あたりの事ども

言葉ノート

今あるもので満足すればいいじゃない

モームの小説には、紙面から浮き上がってくるような名言が多い。『お菓子とビール』から。 ロウジ―は、若き医学生のアシャンデンが、彼女の男関係を嫉妬するのを知って、こんなふうに言う。 「どうして他の人のことで頭を悩ますの? あなたにとって何の不都…

美は退屈である

モームの小説『ビールとお菓子』から。 「美は恍惚であり、空腹のように単純だ。美について何か語るべきことなどありはしない。バラの香水のようなもので、香りを嗅いで、それでおしまい。だからこそ、芸術の批評というのは、美と無関係つまり芸術と無関係で…

とんでもはっぷん

職場で40代の同僚が、ある人(年齢は50歳)がよく使う「とんでもはっぷん」という言葉の意味が分からないという話をした。なつかしい言葉だ。しかし、僕にとっても上の世代の人たちが使っていた古い時代の流行語として多少耳になじんでいるだけで、自分で使…

伸ばすと曲がる野菜はな-んだ?

職場に生命保険の営業の人が出入りしていて、来るときは毎日小さな手作りの新聞(メモ?)を配っている人もいる。その中になそなぞコーナーがあって、毎日ひとつなぞなぞが載っている。答は翌日に発表される。今では、ネットになぞなぞのサイトなどがあるか…

読まれている記事

人知れず書き続けているブログだが、ブログ内の注目記事欄に出てくるような多少アクセスのある記事には変遷があって面白い。僕にとっては、それが過去の記事を振りかえるきっかけにもなっている。 ブログ開設から数年の間アクセスを伸ばしてくれた「北九州監…

幼なじみに手紙を書く

語義からいうと幼なじみとは、幼年期からの友達ということになるようだが、そのころの友人で今でも印象に残っている人はほとんどいない。彼とは、小学校4年5年6年の頃の同級生で、同じ公立中学に入学して同じクラスになることはなかったが、3年間同じ部…

安部文範さん遺稿集編集後記(案)

安部さんが『菜園便り』を出版したとき、売上で出版基金を作りたいと持ちかけられた。結局、僕の怠惰もあって基金は稼働しなかったけれど、最後で唯一の仕事が、安部さんの遺稿集の作成ということになった。 安部さんが入院したのは、コロナ禍の初年度で、結…

時間が溶ける

職場の若い人とアニメの話をしていたら、「時間が溶ける」と聞きなじみのない言い方をしていて、面白いなと思った。調べると、かなり近年の若者言葉で、ゲームなどに夢中になって時間があっという間に過ぎてしまう感覚をいうらしい。 僕も近頃、通勤電車の中…

結婚式乾杯挨拶

※以前の職場の若い二人の結婚式に招待され、乾杯挨拶を頼まれた。若年層が減り、結婚が減ったうえに式を挙げないケースも増えたから、結婚式に呼ばれる機会はめったにない。それでもスピーチの経験は何回かあるから、場の雰囲気はわかる。乾杯なら、スピーチ…

読書会レジュメ(聞き取りコレクション)

読書会で、森崎和江さんの『まっくら』を取り上げるにあたって、そもそも聞き取り・聞き書き(的なもの)が僕たちの暮らしや思想の中にどんな風にかかわっているのかが知りたくて、参加者がそれを持ち寄るのを課題にした。以下のレジュメは、僕自身の「聞き…

村の賢人の新展開

先日、久しぶりに「村の賢人」原田さんのアトリエ兼作業場(旧馬小屋?)を訪ねたら、そこいらじゅうに見慣れない動物の墨絵が飾ってある。キリン、クジャク、サイ、サル、ワニと、バラエティに富んでいるだけではなく、今までの賢人の絵のタッチとまるでち…

同世代の歌人のトークイベントから

歌人の穂村弘(1962-)のトークイベントに参加した。ビブリオバトルの関連イベントだから、歌の話ではなく、さまざまな本と作家のことを話した。 数百人の読書好きの聴衆(年齢高め)がいたが、ほとんどが僕の様にこの世の事に軸足を置いて、余暇で読書を楽…

おっさんビジネス用語など

世間の流行には疎いほうだし、それを追うような記事もほとんど書いていないと思う。ただ、今ネットでいくらか話題になっている「おっさんビジネス用語」というくくりは面白いと思った。 最優先課題について「一丁目一番地」といい、数字をごまかすことを「鉛…

漢字と英語の試験を受けようと思い立つ

長い間、自由気ままな読書とフィールドワーク以外何もせずになまけてきたが、昨年度、久しぶりにいくつか資格試験を受験して、その対策の勉強に取り組んだ。2年前に大学の通信教育(ネットのみ)で図書館司書の資格を取っているから、それがよいリハビリに…

リズムはわかるけど力がないから回れない

JR南武線、といっても僕の子どもの頃のようなチョコレート色のダサい車両ではない。すっかり都市郊外を走るお洒落な路線になっていて、西府なんて新しい駅もある。 目の前に、中学一年生の制服姿の男子学生が並んで立っておしゃべりをしている。二人とも小柄…

頑張ってる人より頑張ってない人から勇気をもらえる

動画配信者「絶望ライン工」さんの言葉。 彼の動画のパターンは強迫的なまでに定型を踏まえている。同じ導入、同じ制服、同じ挨拶、同じ目線、同じ乾杯、同じギャグ。ただ、そこからの微細なズレや揺らぎが笑いをさそい、突然の飛躍が思わぬ感動を呼ぶ。 こ…

「へこむ・凹む」再論

国木田独歩の短編を読んでいたら、こんな文章を見つけた。 「僕が高慢な老人を凹ましたかのか、老人から自分の高慢を凹まされたのか分からなくなったが、兎も角、少しは凹ましてやった積で宅に帰り、この事を父に語った」(「初恋」1900) まさに、凹むのオ…

『熟語公式で訳す英文解釈問題集2』 篠崎書林 1993

高校の英語の授業は、当時、リーダー(読解)とグラマー(文法)とコンポ(作文)に分かれていた。といっても、みんなでそう言い慣わしていたからそう呼んでいただけで、授業の中身がきちんとその言葉通りに切り分けられていたわけではない。 教科書は指定さ…

ご注文ありがとにゃん!

休日、早朝からのファミレスで読書を楽しむ。ここは注文がタブレットだから、さらに気楽だ。ドリンクを飲んでいると、どこからか不可思議な音楽が近づいてくる。顔をあげると、目の前にフラフラと配膳用のロボットが現れた。 まったく予想もしていない事態だ…

キラキラとシワシワ

キラキラネーム(の問題点)については、世間でもかなり認知されているだろう。少し前に近ごろの子どもたちの名簿を見た時に、読めない名前の多さに驚いてしまった。純然たるキラキラネームではなくとも、名前のキラキラ化はすすんでいるようだ。 最近、シワ…

高本裕迅の基礎英語2

僕が中学生の頃は、HNKラジオの「基礎英語」と「続基礎英語」が、ネイティブの発音に触れる唯一といっていい機会だった。あと、中学教師が授業で使うラジカセのテープの音声。先生たちの発音はおせいじにも上手とは言えなかった。 両講座の内容は中学生には…

隙自語

ネットスラングで、ネット上の掲示板などで使われる言葉なのを、最近知った。スキジゴ」または「スキアレバ、ジブンガタリ」と読む。 意味は、まさに、「隙あれば自分語り」ということで、匿名の掲示板などで空気を読まずに自分のことを長々と語ってしまう嫌…

「山はいいよ、山は死なないから」

山川菊栄『わが住む村』から。村で育った昔の娘さんたちにとって、山へ焚き木をひろいにいくことは楽しい仕事の一つで、友達といっしょに山に遊びにいくような気分だったという。 「山はいいね。山に行って燃し木を掻(か)いてくるぐらい楽しみなものはない…

一代終えるのは「やおいかん」

タリーズコーヒーで例のごとく勉強していると、となりの席に男性が座った。髪が少し伸びていて、やや太めのラフな恰好をしたおじさん、といっても僕よりはだいぶ若いだろう。その向かいには同じくらいの年かっこうの女性が座って、二人の会話はいやでも耳に…

馬柱とは何か

競馬に触れるようになって、馬柱という奇妙なコトバを知った。 馬柱ってなんだろう。「人柱」なら、築城や架橋や堤防工事のときの神にささげる生贄のことだから、少し不穏で残酷な匂いがする。レース中の事故で亡くなった馬を祀った慰霊碑みたいなものだろう…

アラっと修復、アラントイン

アラントインは医薬品に配合される組織修復成分。目薬や口内炎の薬などに入っている。この成分名と効用を覚えるためのごろ合わせが、「アラっと修復、アラントイン」だ。 医薬品の登録販売者の試験では、医薬品とその成分を覚えるのに苦労する。僕にはまった…

人を呪わば穴二つ

他人に害を与えれば、必ず自分にかえってくるということ。他人を呪い殺せば、自分も相手の恨みの報いで呪い殺され、結果墓穴が二つ必要になるということから。漠然と口にしてはいたが、意味まで調べたことはなかったので、こうまでダイナミックかつダイレク…

犬が3匹、猫が2匹、鳥が1羽、カメが1個

この住宅団地に転居したての時のご近所さんで、ずいぶん前に関東に引っ越した家の奥さんと、妻は今でも連絡を取っているようだ。いっしょに子育てをして子ども同士を遊ばせていたから、きずなが深いのかもしれない。 その友人の家にいかにペットが多いかを、…

『英語の構文150』 高梨健吉 1969

高校時代の英語の参考書といえば、美誠社の構文シリーズが懐かしい。授業の副読本に指定されたのは、1978年の改訂新版だったかもしれない。この本は、その後、新訂版、改訂版と引き継がれ、1999年まで30年に渡って発行されている。 2000年以降は、New Editon…

しゃちこばる

本を読んでいたら、「しゃちこばる」という言葉が使われていた。 まるでなじみがない言葉に出会うのは、この年齢まで本を読んできて、今さらあまりない経験だ。ただし、まったく手がかりがないわけではない。緊張して硬くなるという意味だとは、なんとなく想…