大井川通信

大井川あたりの事ども

とんでもはっぷん

職場で40代の同僚が、ある人(年齢は50歳)がよく使う「とんでもはっぷん」という言葉の意味が分からないという話をした。なつかしい言葉だ。しかし、僕にとっても上の世代の人たちが使っていた古い時代の流行語として多少耳になじんでいるだけで、自分で使ったことはないと思う。

「とんでもない」という言葉を面白く言い表しているというくらいの認識で、その謂れも流行の発信源も知らなかった。

今回調べてみると、ネットの辞書には、「とんでもない」と英語のhappenを結び付けた語で、「とんでもない」を強めた言葉という解説がある。昭和25年の流行語というのも、僕の体感でなるほどそれくらいの古さだろうと思う。

ただ意外だったのは、流行の震源地が獅子文六(1893-1969)の小説『自由学校』だということだ。登場人物の一人のセリフだそうだが、作者の造語ではなくて当時若者たちの間で使われていた言葉らしい。

流行語というとテレビによる発信というイメージがあるが当時はまだ放送開始(1955年)の前で、新聞連載小説のセリフに流行語を生みだす力があったのだろう。もっともこの小説は翌年には映画化されて大ヒットしたそうだから、流行に力があったのはむしろ映画の方かもしれない。