大井川通信

大井川あたりの事ども

教育

What と Way

マネジメントの教科書で、日本の組織は、部下への機会の与え方を支援の仕方において、弱点があるということを書いてあった。 肝心なのは、適切な課題(What)と同時に、それをいかにしてやるのか(Way)というコツを教えるということだった。そして、そのコ…

「楽ちん戦略」ということ

20代の頃、塾の専任講師を三年間やっていた。教育に志があったわけではなく、最初の会社を辞めて、生活のためにたまたま見つけた仕事だった。 塾では、小中学生に社会科を教えた。進学塾なので、クラスは学力別に、S、H、M、Bと分かれている。Bクラスはベイ…

サクラサク

読書会仲間である友人から息子さんが第一志望高に合格したという連絡を受けた。昨年の秋の読書会の三次会で、珍しく彼と二人きりになった時、息子さんの受験勉強をみているという話を聞いた。大学の英語教師である彼は、毎日帰宅後息子さんに英語を教えてい…

『白菜のなぞ』 板倉聖宣 2002

「仮説実験授業」で有名な板倉聖宣(1930-2018)が、1994年に学習用副読本として執筆した本を、一般の科学読み物として再刊したもの。新刊当時購入してから、20年近くたってようやく手に取った。 薄いのですぐに読めたが、とにかく面白かった。日本人が白菜…

粕谷先生の思い出

中学校に上がると、剣道部に入った。スポーツが好きでも得意でもなかったのに入ったのは、親から言われたからと思っていたが、同じ部活に小学校時代の親友も多く入部していたので、その影響もあったのかもしれない。 顧問は粕谷先生という社会科の先生で、校…

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』 ブレンディみかこ 2019

読書会の課題図書。面白かった。親子による多様性のためのレッスンともいうべき物語で、すみずみにまで神経の行き届いたテキストになっている。 登場人物の個性も、エピソードの描き方も、ストーリーの展開も、言葉のセンスもとても心地がいい。だから、よく…

『教育委員会が本気を出したらスゴかった』 佐藤明彦 2020

これもまたコロナ禍の初めの数か月におけるドキュメンタリーのような本。あの戸惑いや不安を経験している身からすると、確かに熊本市の教育委員会と学校の対応は、群を抜いて迅速であり、見事だったと思う。 題名と出版のタイミングから、やっつけ仕事みたい…

『英語化は愚民化』 施光恒 2015

扇情的な題名に反して、というか内容はまさに題名のとおりなのだが、実にまっとうな議論が展開されている。語学の専門家ではなく、政治学者の手になるもののためか、目配りが広く近代化のメカニズムからの立論には説得力がある。 大きな風呂敷を広げたうえで…

『学校が泣いている』 石井昌浩 2003

2000年前後の東京の国立市における公立学校の現状について、現役の教育長という立場からのレポート。この報告の30年くらい前に、「文教地区」国立で教育を受けたことをそれなりに誇りに思ってきた自分には、刊行当時読んで、ショッキングな内容だった。 初読…

『〈希望〉の心理学』 白井利明 2001

ずいぶん前に購入した新書を初読。少し前に『夢があふれる社会に希望はあるか』を読んだとき違和感が強かったので、それをぬぐうために手に取ってみた。 前著は、キャリア教育の専門家の本のためもあって、夢=なりたい職業という世間の等式を前提としたうえ…

『飛ぶ教室』 エーリッヒ・ケストナー 1933

ケストナー(1899-1974)の児童文学の名作が読書会の課題図書になる。 ファミレスで読んでいて、涙が止まらなくなり、鼻をかんだナプキンで空いたお皿がいっぱいになった。無垢で健気な子どもと善意の大人の物語というのが、自分にはツボだということがよく…

『直感でわかる数学』 畑村洋太郎 2004

数学は苦手だったにもかかわらず、今でもたまに読み物風の入門書などに手を出してしまう。わかるようになりたい、という気持ちがどこかに残っているのだろう。たいていは開くこともないけれども。 この本は、ブックオフで200円で買ったもので、積読の運命に…

『学校の戦後史』木村元 2015

以前、政治学者原武史の『滝山コミューン1974』(2007)を読んだときに、近代以降の歴史について専門分野にとどまらない膨大な知識をもっている著者が、戦後教育の歴史について無知であることに驚いたことがある。この本を高評価でもって迎え入れた論壇や読…

『夢があふれる社会に希望はあるか』 児美川孝一郎 2016

著者は、今の世の中が「夢を強迫する社会」となっていること、学校におけるキャリア教育がこの風潮を作っていることを指摘する。この指摘は、はじめ僕には違和感があった。これが本当なら、僕の知らないところで、いつのまにか世間がそうなってしまったこと…

『子どもに伝えたい〈三つの力〉』 斎藤孝 2001

斎藤孝(1960-)が論壇に登場して、さかんに発信し始めたばかりの頃の著書。その後、ベストセラーや実用書を数多く出版したり、多数のテレビ番組に出演したりしてすっかり人気学者になる。そうなると、へそ曲がりの僕は著書をまじめに読む気を無くすから、…

『「忙しいのは当たり前」への挑戦』 妹尾昌俊 2019

妹尾さんの本を読むのは二冊目。『教師崩壊』は、一般の人向けに教育界の問題点を啓蒙する本だったが、これは「学校の働き方改革への教科書」というサブタイトルのとおり、現場の教師が実際に使える、現状を変えるためのマニュアルとなっている。 従来の教育…

『校長という仕事』 代田昭久 2014

東京都の公立中学校和田中で、有名な藤原和博氏のあとを受けて、同じリクルート出身者として二代目の民間人校長となった著者の体験記。ビジネスマンが、学校という異世界で何を感じ、どんな試行錯誤をして成果をあげたのかを、外部の人間向けにわかりやすく…

『教育委員会』 新藤宗幸 2013

学生時代に公民館で地域活動をしているときに、仲間で市の行政の仕組みを勉強しようということになって、教育委員会の制度について図解で説明されたのが印象に残っている。正直、よくわからなかった。 市の教育に関する施策を決定しているのは教育委員会だと…

ある元教師の話

休日の午後、津屋崎に出かける。地域のセンターで、地元の山笠についての展示がある。コロナ禍で今年は中止らしい。 もう20年以上津屋崎に出入りしているが、地域のお祭りについて関心を持ったことはなかった。漁業、商業、農業を基盤とする三つの地区がそれ…

『教師崩壊』 妹尾昌俊 2020

公教育の現状の全体について、バランスのよい説得力のある議論を示している。誰もが気楽に手に取ることができる新書版では、ほとんど初めてのことではないか。 データとファクトに基づいて議論をすすめているが、特別な情報を使っているわけではない。少し注…

ある教育メソッドの謎

今は、子どもたちに、協働して一つのことを考えさせたり、話し合いを通じて新しいことを発見させたりする授業がはやっている。これからの時代は、そういう学びの力が必要になるからだという。 そのための授業づくりの手法として、こんな形式的なやり方がある…

オアシス運動

大井川周辺を歩いていて、オアシス運動の標語がかかれた古い掲示板があるのが、以前から気になっていた。大井に一つ。村山田にも一つある。 オ 「おはようございます」 ア 「ありがとうございます」 シ 「失礼します」 ス 「すみません」 僕は今まで、こんな…

人間には「自信」が必要である

ソシオン理論によると、「私」は三要素から成っている。私から見た他者の像(モデル)と、他者から見た私の像(評価)。そして、私の自己像(アイデンティティ)とが、その三つだ。 ふつう「私」というと、他者から独立した三つ目の要素のみをいうのが普通だ…

人間には「期待」が必要である

仕事については、「鳴かず飛ばず」の人生を送ってきた。そろそろ終わりが見える頃にこんなことをいうのも情けないが、本当のことだから仕方ない。 社会人になったとき、あらためて自分は、欠点の多い、不器用な人間だということを痛感した。なんとかぼろを隠…

人間には「モデル」が必要である

それなりに長く生きてきて、腑に落ちたことの一つは、人間にはモデル(師匠)が必要だということだ。 僕の信奉するソシオン理論では、「私」を構成する三つの要素のうち、第一のものは「他者の姿」であり、人はモデルの姿を取り込むことで「私」となる。だか…

ネットのよる学習について(3)

図書館司書資格のためのネット学習についてプラス面を書いたので、今度はマイナス面を。 大学制度の問題なのか、その中で通信制というものの問題なのか、図書館学の問題なのか、図書館司書資格の問題なのか判別できないが、14科目の内容に重複が多すぎる。…

ネットによる学習について(2)

残り2科目は、自習ではなくて、「面接授業」を受けないといけない。これは3日間のスクーリングと、メディア授業とが選択できるので、当然ネットで受講できるメディア授業を選択したのだが、あとからこちらの方がはるかに大変だということに気づいた。 ネッ…

ネットによる学習について(1)

今年度の後半、通信制大学の科目履修生になって、図書館司書の学習をした。すべて教科書とネットによる学習で、すいぶんと発見があった。 一科目あたりの自分の学習パターンは、こんなふうだ。まずはテキストを流し読みする。そのあと指定された課題で200…

教育の矛盾くらい、いい反面教師はいないのかもしれない

安部公房の評論集『死に急ぐ鯨たち』からの言葉。 満州という植民地で育った安部公房は、教育の建前として「五族協和」というコスモポリタニズムを叩きこまれつつ、日本人の優秀性という矛盾した教義を反復させられた。実際に「内地」から来る日本人は、中国…

絶対的に不正であること(本川小学校平和資料館)

原爆投下の目標になったといわれるT字形の相生橋を渡ると、すぐのところに本川小学校があった。路地に入ると、敷地の一角に、表面のコンクリートが傷んだ異様な建物が目につく。正門に回って、事務室を許可を得てから、その平和資料館に入った。 当時鉄筋コ…