大井川通信

大井川あたりの事ども

教育

『飛ぶ教室』 エーリッヒ・ケストナー 1933

ケストナー(1899-1974)の児童文学の名作が読書会の課題図書になる。 ファミレスで読んでいて、涙が止まらなくなり、鼻をかんだナプキンで空いたお皿がいっぱいになった。無垢で健気な子どもと善意の大人の物語というのが、自分にはツボだということがよく…

『直感でわかる数学』 畑村洋太郎 2004

数学は苦手だったにもかかわらず、今でもたまに読み物風の入門書などに手を出してしまう。わかるようになりたい、という気持ちがどこかに残っているのだろう。たいていは開くこともないけれども。 この本は、ブックオフで200円で買ったもので、積読の運命に…

『学校の戦後史』木村元 2015

以前、政治学者原武史の『滝山コミューン1974』(2007)を読んだときに、近代以降の歴史について専門分野にとどまらない膨大な知識をもっている著者が、戦後教育の歴史について無知であることに驚いたことがある。この本を高評価でもって迎え入れた論壇や読…

『夢があふれる社会に希望はあるか』 児美川孝一郎 2016

著者は、今の世の中が「夢を強迫する社会」となっていること、学校におけるキャリア教育がこの風潮を作っていることを指摘する。この指摘は、はじめ僕には違和感があった。これが本当なら、僕の知らないところで、いつのまにか世間がそうなってしまったこと…

『子どもに伝えたい〈三つの力〉』 斎藤孝 2001

斎藤孝(1960-)が論壇に登場して、さかんに発信し始めたばかりの頃の著書。その後、ベストセラーや実用書を数多く出版したり、多数のテレビ番組に出演したりしてすっかり人気学者になる。そうなると、へそ曲がりの僕は著書をまじめに読む気を無くすから、…

『「忙しいのは当たり前」への挑戦』 妹尾昌俊 2019

妹尾さんの本を読むのは二冊目。『教師崩壊』は、一般の人向けに教育界の問題点を啓蒙する本だったが、これは「学校の働き方改革への教科書」というサブタイトルのとおり、現場の教師が実際に使える、現状を変えるためのマニュアルとなっている。 従来の教育…

『校長という仕事』 代田昭久 2014

東京都の公立中学校和田中で、有名な藤原和博氏のあとを受けて、同じリクルート出身者として二代目の民間人校長となった著者の体験記。ビジネスマンが、学校という異世界で何を感じ、どんな試行錯誤をして成果をあげたのかを、外部の人間向けにわかりやすく…

『教育委員会』 新藤宗幸 2013

学生時代に公民館で地域活動をしているときに、仲間で市の行政の仕組みを勉強しようということになって、教育委員会の制度について図解で説明されたのが印象に残っている。正直、よくわからなかった。 市の教育に関する施策を決定しているのは教育委員会だと…

ある元教師の話

休日の午後、津屋崎に出かける。地域のセンターで、地元の山笠についての展示がある。コロナ禍で今年は中止らしい。 もう20年以上津屋崎に出入りしているが、地域のお祭りについて関心を持ったことはなかった。漁業、商業、農業を基盤とする三つの地区がそれ…

『教師崩壊』 妹尾昌俊 2020

公教育の現状の全体について、バランスのよい説得力のある議論を示している。誰もが気楽に手に取ることができる新書版では、ほとんど初めてのことではないか。 データとファクトに基づいて議論をすすめているが、特別な情報を使っているわけではない。少し注…

ある教育メソッドの謎

今は、子どもたちに、協働して一つのことを考えさせたり、話し合いを通じて新しいことを発見させたりする授業がはやっている。これからの時代は、そういう学びの力が必要になるからだという。 そのための授業づくりの手法として、こんな形式的なやり方がある…

オアシス運動

大井川周辺を歩いていて、オアシス運動の標語がかかれた古い掲示板があるのが、以前から気になっていた。大井に一つ。村山田にも一つある。 オ 「おはようございます」 ア 「ありがとうございます」 シ 「失礼します」 ス 「すみません」 僕は今まで、こんな…

人間には「自信」が必要である

ソシオン理論によると、「私」は三要素から成っている。私から見た他者の像(モデル)と、他者から見た私の像(評価)。そして、私の自己像(アイデンティティ)とが、その三つだ。 ふつう「私」というと、他者から独立した三つ目の要素のみをいうのが普通だ…

人間には「期待」が必要である

仕事については、「鳴かず飛ばず」の人生を送ってきた。そろそろ終わりが見える頃にこんなことをいうのも情けないが、本当のことだから仕方ない。 社会人になったとき、あらためて自分は、欠点の多い、不器用な人間だということを痛感した。なんとかぼろを隠…

人間には「モデル」が必要である

それなりに長く生きてきて、腑に落ちたことの一つは、人間にはモデル(師匠)が必要だということだ。 僕の信奉するソシオン理論では、「私」を構成する三つの要素のうち、第一のものは「他者の姿」であり、人はモデルの姿を取り込むことで「私」となる。だか…

ネットのよる学習について(3)

図書館司書資格のためのネット学習についてプラス面を書いたので、今度はマイナス面を。 大学制度の問題なのか、その中で通信制というものの問題なのか、図書館学の問題なのか、図書館司書資格の問題なのか判別できないが、14科目の内容に重複が多すぎる。…

ネットによる学習について(2)

残り2科目は、自習ではなくて、「面接授業」を受けないといけない。これは3日間のスクーリングと、メディア授業とが選択できるので、当然ネットで受講できるメディア授業を選択したのだが、あとからこちらの方がはるかに大変だということに気づいた。 ネッ…

ネットによる学習について(1)

今年度の後半、通信制大学の科目履修生になって、図書館司書の学習をした。すべて教科書とネットによる学習で、すいぶんと発見があった。 一科目あたりの自分の学習パターンは、こんなふうだ。まずはテキストを流し読みする。そのあと指定された課題で200…

教育の矛盾くらい、いい反面教師はいないのかもしれない

安部公房の評論集『死に急ぐ鯨たち』からの言葉。 満州という植民地で育った安部公房は、教育の建前として「五族協和」というコスモポリタニズムを叩きこまれつつ、日本人の優秀性という矛盾した教義を反復させられた。実際に「内地」から来る日本人は、中国…

絶対的に不正であること(本川小学校平和資料館)

原爆投下の目標になったといわれるT字形の相生橋を渡ると、すぐのところに本川小学校があった。路地に入ると、敷地の一角に、表面のコンクリートが傷んだ異様な建物が目につく。正門に回って、事務室を許可を得てから、その平和資料館に入った。 当時鉄筋コ…

高学歴ニートにおごる金はない

次男には、子どもの頃から不思議な才能が有って、家にあるおもちゃを組み合わせて、自分で新しい遊びのルールを思いついたりした。そんなとき、おとなしい長男は、4歳年下の弟の考えた遊びに喜んで加わっていた。 中学の時の特別支援学級の担任に久し振りに…

次男の子育て(高校入学)

夏の一次試験、冬の二次試験と倍率3倍の試験をかいくぐって、特別支援学校高等部の一般就労を目指すクラスに合格した。二次試験では面接対策がぬけていたにもかかわらず、こわもての先生の質問にも臆せず単語で切り返す様子は、後から何度も笑い話の種になっ…

次男の子育て(中学校時代)

いよいよワタルもブレザーの制服を着て、中学に通うようになる。 小学校までは、1キロ弱だったが、中学までは2キロ以上の道のりで、自転車通学が認められていた。長男は幼稚園時代から自転車を乗り回していたが、ワタルは友だちと遊びまわる機会もなかったか…

似たものクイズ ‼︎

自然のなかには、よく似たものがあります。比べて、共通点に気づいたり、違いを見つけたりすることは楽しいし、自然を深く知ることにつながります。 それでは、浜辺でひろった固い殻シリーズでいきましょう。 では、一問め。そう、これは貝です。カズラガイ…

趣味と禁忌

小学生の頃、手品ばかりやっていて、学校の成績が落ちてしまったときに、父親から手品師になるつもりかと怒られたことがある。なってもいいのだけれどと思いながら、そこはすなおに手品を控えるようになった。 中学生になって、小説を読むようになったときも…

次男の子育て(作文と読書)

次男の勤める職場では、職員研修の後のレポートを書く課題がけっこうな頻度である。今回子育てを振り返りながら、次男が小学校入学時、宿題が好きだったことを思い出したが、今でも提出日の何日か前には書き上げてしまう。 確か入社して丸一年がたったときに…

次男の子育て(小学校高学年)

感覚統合研究会(SI)の3年間を修了すると、小学校入学前の療育施設「のぞみ園」から引き続く6年間の手厚い人間関係を、親子ともども失うことになった。ワタルは、ずいぶんしっかり言葉をしゃべれるようにはなったが、ひきかえに時には厳しい人間関係にさ…

『ケーキの切れない非行少年たち』 宮口幸治 2019

著者は、公立精神科病院で児童精神科医として勤務していたが、発達障害や知的障害をもち様々な問題行動を引きおこす子どもたちに対して、対症療法以外の支援方法を見いだせずに悶々とした日を過ごしたという。藁にもすがる思いで病院をやめ、支援のヒントを…

次男の子育て(感覚統合研究会)

小学校入学と同時に、ワタルは感覚統合研究会(「SI」)に週一回通うようになる。この会は、地元の教育大学の学生のサークルで、顧問は他大学に転出した先生が時々指導に来ていた。会では学生たちが感覚統合理論に基づいて療育する子どもを募集していて、ワ…

次男の子育て(小学校入学)

いよいよワタルの小学校生活が始まる。幼稚園での様子からは、補助の先生なしで小学校になじめるのか、とても不安だった。 ところが、四月には、ワタルが宿題にマルをもらってかえってきた。本人も「がっこうはしゅくだいがあるからいい」と話したという当時…