大井川通信

大井川あたりの事ども

サクラサク

読書会仲間である友人から息子さんが第一志望高に合格したという連絡を受けた。昨年の秋の読書会の三次会で、珍しく彼と二人きりになった時、息子さんの受験勉強をみているという話を聞いた。大学の英語教師である彼は、毎日帰宅後息子さんに英語を教えているという。

親が子どもの受験勉強にかかわることの難しさは、8年前の長男の大学受験の時に経験して痛感している。長男の高校二年の終わりの成績を見て、このままでは大学進学が難しいことに気づいた。塾講師の経験から、学力が短期間で簡単にあがるものでないことを知っていたからだ。一方、受験で点をとる技術に関してだけは自分でも多少自信があった。

もちろんたかが大学なのだが、自分の子どもなので学歴抜きで自力で勝負するタイプではないのがなんとなくわかったいた。その時から親子の悪戦苦闘が始まる。親は最悪の教師であるとは聞いていたが、実際にそうだった。しかしほかに選択肢はないし、今さらひくわけにもいかない。成果も少しずつ上がってきて、親子の関係も悪いばかりではなかった。

一か月に一回くらい、節目になるタイミングで、現状の総括と今後の課題みたいなものを長文の手紙にして息子に渡していた。僕自身が考えをまとめるためであったし、効率的に最短距離を進むために、ここだけは押さえておいてほしいという作戦のエッセンスを伝える必要があったからだ。

今読み返すと、子どもに媚びすぎているくらいに面白おかしく書いている。しかしその内容は、その時の子どもの状態にピンポイントで突き刺さるような受験勉強の奥義や秘術を書き込んだつもりだった。

息子の頑張りが通じて第一志望の大学に合格がしたあとで、さすがに愛着があり、一年間の手紙のデータをまとめて、手元に置いておいた。少し恥ずかしくもあったが、この時の手紙のコピー(A4で20頁)をそのまま、友人に送ってみたのだ。親が子どもの受験指導にあたったドキュメンタリーとして参考になるかもしれないとおもったからだ。

友人は、僕の手紙を何度も見返したと書いて感謝してくれた。大変だった思い出がよみがえってくるが、あの泥沼の中で絞り出した言葉が友人の助けに少しでもなってくれたのなら、とてもうれしい。