大井川通信

大井川あたりの事ども

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

サークルあれこれ(番外編:哲学講読会)

かつてあった哲学の勉強会の話。 今から10年以上前、数年間(2014~2016)にわたってとびとびで地元の哲学カフェに通った。今人気の哲学風議論のカフェではなくて、哲学書の翻訳文を月二回地道に読んでいく会だった。主催は、在野の哲学者にして市民運動家の…

サークルあれこれ(その7 聞法道場)

地元の街で開かれている浄土真宗の門法道場と出会ったのも、今となってはとても貴重な偶然だったと思う。当時僕は、今村先生の導きで浄土真宗大谷派の清沢満之を読むようになってはいたが、刊行されたばかりの全集を持て余しているところもあった。 それで、…

サークルあれこれ(その6 宗教勉強会)

昨年夏から、金光教の行橋教会に通い始めた。毎月中旬に一回と決めているが、月二回となるときもある。井手先生はその都度拝礼をしてくださるが、今のところ参拝が目的ではなく、金光教を中心とする宗教、思想について話をするのが目的となっている。 僕の方…

『『金光教経典』物語』 福嶋義次 2019

大矢嘉先生の文章に教えられて、福嶋義次(1934-)を読んでみようと思って手に取ったのだが、良い本に出会ったものだと思う。自分史にからめて経典再編の経緯をたんたんと書いた本で、あっさり読めてしまうが、僕にとってはある意味で高橋一郎の本とおなじ…

長沢芦雪を観る

数日前から、風邪をひいてしまった。昨年末にあれだけ風邪をこじらせたのに、まただ。東京で美術展が思いのほか良かったので、ここにきて九州国立博物館の『芦雪展』に行ってみたくなった。週末が最終日なので、どこかで時間を見つけていくしかない。 風邪で…

こんな夢をみた(学校訪問)

僕はアポをとってT高等学校を訪問する。K教主催の青少年向けイベントのチラシをもっていくのだ。宗教関係は嫌われるが、これはあくまで子どもが主体のイベントだし、公の後援もとってあるからそれは大丈夫と考えていた。 T高校につくと、ひろい職員室の片…

円融寺釈迦堂 東京都目黒区 (禅宗様建築ノート12)

東京23区で一番古いという室町建築の重要文化財。円融寺釈迦堂を「禅宗様建築」の仲間に分類することは、素人の僕でも抵抗がある。中世から近世にかけて、純粋に禅宗様の手法で建てられた建物が多くあり、そのように容易に和様化されないところに禅宗様のア…

おかげと取次

半年ぶり以上に、地元の金光教会にうかがって津上教会長と話をする。ちょっとしたきっかけだった。近所の酒屋で「感謝」という銘柄の焼酎の小ぶりのボトルがあったので、行橋の参拝用にと思って購入したときに、同じものをもって地元の教会に行こうと思いつ…

装甲騎兵ボトムズと再会する

自動車の免許を取ったのは大学の4年、就職が決まった後だった。中央線から見える東小金井の尾久自動車教習所に通った。中央線も高架になり、かつての田舎駅たちも立派な駅ビルとなって沿線風景も一変してしまったが、教習所は昔通りの練習コースと建物の姿…

行橋詣で(2024年3月 再び)

隣町の苅田に仕事で出かける用事があったので、その帰りに同僚の車で教会の近くまで送ってもらう。前回から10日程度しか経っていないが、東京旅行をはさんでいるせいか、話題には事欠かないし、心境の進展もある。東京みやげのどら焼きをお持ちする。 大矢嘉…

美術展で仏教を学ぶ

府中市美術館には頭が上がらない。帰省先の隣町だから気楽に寄れるし、ユニークで切れのいい特別展は、いつも予想をこえて面白い。牛島憲之の常設展示スペースがあるのもよい。 今回の特別展は『ほとけの国の美術』。誰もが知るような目玉の展示作品があるわ…

動坂と八幡坂

東京の田端に行った。芥川の屋敷跡は、駅のすぐ近くの住宅街にあった。こんなに近いなら大学時代にでも見ておけばよかったと思ったが、早稲田の漱石山房跡すらのぞかなかったのだから仕方がない。 芥川が歩いた道をたどるのは楽しい。田端文士村記念館でもら…

くりばやしの餃子に歓喜する

僕には食へのこだわりはほとんどない。こだわってもせいぜいB級グルメで、それもごく少数だからすでにネタは尽きている。そう思っていた。 時は35年前にさかのぼる。僕は新採で入った会社を辞めて実家に戻り、八王子で塾講師をやっていた。父親はリーカーミ…

道玄坂の100年

父親は渋谷道玄坂の生まれだ。誕生日が大正13年(1923年)の3月18日だから、今日でちょうど満100歳となる。亡くなったのは2006年で82歳の時だったが、今年は生誕100年のお祝いをしようと姉と話していた。 夏目漱石の『夢十夜』の第一夜に、100年経ったら会い…

贈与としての学び

姉と父母の墓参りをしてから八王子に寄り、午後に国分寺に戻る。夕方から駅前のデニーズで、かつての同僚である教育学者の大村さんと話をする。 大村さんからは、新著の意図として、図表に頼らず言葉で懇切に説明すること、教育界の目下の流行語である「個別…

『真贋』 吉本隆明 2007

吉本隆明(1924-2012)の忌日(横超忌)が旅行中だったので、新刊書店で手に入る文庫本を見つけて、読んでみる。吉本82歳、晩年に多かったインタビュー本だ。体調を悪くしてからのこの手の本づくりを批判している人もあったと思うが、実際に読むとその批判…

とんでもはっぷん

職場で40代の同僚が、ある人(年齢は50歳)がよく使う「とんでもはっぷん」という言葉の意味が分からないという話をした。なつかしい言葉だ。しかし、僕にとっても上の世代の人たちが使っていた古い時代の流行語として多少耳になじんでいるだけで、自分で使…

著者への手紙 ー『クラウド環境の本質を活かす学級・授業づくり』(大村龍太郎 2023)

本のなかで、「丁寧に日々をつむいでいく」という言葉もあって、あらためて共同体的な価値観が大村さんの中に息づいているなと実感しました。人気学者のなかには、一般人に対してたしか「探求的エピステモロジー」なんて無骨なキーワードを投げ出して平気な…

サークルあれこれ(その5 ビブリオバトルクラブ)

地元でビブリオバトル大会を開くための団体。公的な補助金を受けて活動資金に充てているが、メンバー4人の活動は完全なボランティアだ。僕は数年間ビブリオバトルの参加者としてかかわって、声がかかり昨年から正式メンバーになった。 読書会や勉強会は、単…

サークルあれこれ(その4 小説読書会M)

2017年の10月に、北九州市の小倉の文学サロン(商店街の中の公的なスペース)で開催されている読書会に顔を出してみた。文学サロンの設立に学生時代の長男がかかわっていたので、どんな場所か確かめてみたいという思いもあったのかもしれない。 ただ、読書会…

サークルあれこれ(その3 MMA的勉強会M)

MMAとは、mixed martial arts の略称で「総合格闘技」のこと。打撃や投技、関節技など様々な技術を駆使して戦う格闘技で、名称も競技としての歴史も比較的新しい。日本では「異種格闘技」の方が耳になじみがあって、比喩としても通りやすいだろう。、この…

行橋詣で(2024年3月)

以前は特急を行橋で降りそびれたことがあったが、今回は、別路線にいく電車に乗り間違えてしまい、気づいたら見慣れない山間部を走っている。よく見たら古びたワンマン車両だ。のどかな無人駅で降りて折り返しを待つことになった。 日曜日の商店街は相変わら…

サークルあれこれ(その2 思想系読書会R)

日本の風土で哲学思想(というより論理)を語り合うことの困難を骨身にしみて考え続けることのできた読書会。30年にわたってつかずはなれずの関係をつづけたおかげで、いろいろな課題を見つけることができた。そのことはいくつかの記事に書いてきた。 今まで…

サークルあれこれ(その1 詩歌読書会K)

僕は月に一回、詩歌を読む読書会に参加している。初回が萩原朔太郎の『月に吠える』で2019年6月30日だったから、それ以来6年近くになる。事情があって行けない時もあるから実際の参加率は、三分の二くらいかもしれない。 主宰の神保さんは古書店を兼ねたブッ…

月がついてくる話(安部公房生誕100年)

長男を子育て中、幼児だった彼が、自動車の窓から月を見つけて、「どうして月がついてくるの?」と不思議がっていた時期があった。なるほど、窓の景色はどんどん飛び去って行くのに、いつまでも夜空の月は風景を横切って追いすがってくる。 僕も同じような経…

『続・ゆかいな仏教』 橋爪大三郎・大澤真幸 2017

『ゆかいな仏教』があまりに面白かったので、その続編を注文して読んでみた。同じ対話形式の本でも、前著の半分くらいのボリュームしかない。前著は、本づくりのために仏教を網羅的に語ったものだが、今回は雑誌掲載の対談2本をまとめただけだから、分量の…

お互いに空気であること

近代短歌の名作集を読んでいたら、老いた作者が、その妻を「空気」みたいな存在だと表現する歌があった。昔の歌なので、当時から「空気」という比喩表現があったことに驚く参加者の声もあった。 たしかに高齢になってお互いが空気の様に気にならなくなった夫…

『近代秀歌』 永田和宏 2013

以前、同じ著者の『現代秀歌』を別の読書会で取り上げて報告したことがあるが、同じ岩波新書のこの本が、今度は詩歌を読む読書会の課題図書となった。 日本人ならせめてこれくらいの歌を知っておいてほしいぎりぎりの百首を選んだと著者が豪語しているとおり…

M先生の格闘

今年も、アメリカから来日して浄土真宗の大学で研究をし日本で研究者になったM先生の話を聞いた。三コマの講義に質疑応答をあわせて4時間にわたる講座だ。外部からの参加者は優遇されるとかで今年は先生の目の前の席だった。すごい話を聞いてしまったという…

『飛ぶ男』 安部公房 1994 

安部公房(1924‐1993)の没後、フロッピーディスクに遺されていた作品で、生誕100年に合わせて、データに忠実な形で文庫化したものらしい。 『他人の顔』の文庫本解説で大江健三郎が、安部は短編の名手だが、長編になるとバランスの悪いものを書きがちである…