大井川通信

大井川あたりの事ども

装甲騎兵ボトムズと再会する

自動車の免許を取ったのは大学の4年、就職が決まった後だった。中央線から見える東小金井の尾久自動車教習所に通った。中央線も高架になり、かつての田舎駅たちも立派な駅ビルとなって沿線風景も一変してしまったが、教習所は昔通りの練習コースと建物の姿を見せてくれていてホッとする。

教習所の待合室にはテレビがあって、待ち時間にぼんやりそれを眺めることもあったが、そこで知った番組がアニメの装甲騎兵ボトムズだった。

ネットで調べると、テレビ東京での放送(全52話)は1983年4月から翌年3月までだから、ちょうど僕の大学4学年と重なる。浅田彰中沢新一が本を出してニューアカデミズムがブームになった一年だ。

それまで多少はロボットアニメを見てきた僕にも、ボトムズはとにかくかっこよくてSF的な設定もリアルで魅力的だった。主人公キリコの孤独でニヒルなキャラもいいし、素体と呼ばれるヒロインの女戦士も美しかった。何より大人っぽい主題歌と予告編の切れのある口上が新鮮だった。

当時はまだアニメは子どもの見るもので、僕は偶然のきっかけからボトムズを知ることになったが、その前後から作り続けられて爆発的な人気となったガンダムシリーズはまったく見ていない。だから自分より若い世代がガンダムガンプラの話に夢中になっても蚊帳の外で、唯一ボトムズだけが話題に入り込めるアニメとなった。

後にビデオや衛星放送などで、ボトムスが手軽に鑑賞できるようになっても、僕はその初めのあたりを見直しただけで、おそらく全編を見てはいないような気がする。これが僕の悪いところだ。根気や執着心が足りずマニアにはなり切れないのだ。

稲城市に叔母がいて、初回放送の頃、中学生くらいの従兄がボトムズが好きだと言って話があった記憶がある。その時は知らなかったが、メカニックデザインを担当した大河原邦男稲城市出身で在住だというから、その影響だったのかもしれない。

最近、その大河原氏を記念して、稲城市ボトムズで主人公キリコが搭乗するロボット「スコープドック」の実物大模型が設置されたというニュースを聞いた。実物大のロボットを見に行くのは神戸の鉄人28号以来だ。

実際に対面すると、4メートル弱のスコープドックは、18メートルの鉄人のような迫力はない。稲城長沼駅前の殺風景な広場の端に、闘いに疲れた身体を休めていた。メカのデザインに夢中になるような観方はしていなかったから、再現度合いを楽しむことはできなかったが、やはり懐かしかった。

従弟のオサム君も喜んでいるだろうか。