大井川通信

大井川あたりの事ども

地方・まちづくり

『地域衰退』 宮崎雅人 2021

地方衰退の危機的現象を描いた本や、その中で元気な地方の事例や町おこしの実際を描いた本は多いが、類書とは違う個性(骨太の分析と処方箋というべきか)が感じられた。 データに基づき、国の政策の関与の問題点も指摘しながら、地方衰退のメカニズムを明確…

『老いる家 崩れる街』 野澤千絵 2016

家。家。家。僕の頭の中は、おそらく家のことでいっぱいだ。子どもの頃は、家が世界そのもので、それは世界の中心であり続けた。よその家との比較ができるようになると、それは悩みやコンプレックスの種となった。社会人となって、家を購入すると、そのため…

『不安な個人、立ちすくむ国家』 経産省若手プロジェクト 2017

数年前に話題になった本だが、これもパラパラとながめて、ほっぽり出していた。あらためて読むと、面白い。レポート部分は50頁にもみたないが、充実している。これを活用しないのはもったいないところだった。 結論部の提案は三点。高齢者を一律に弱者と見な…

『日本はどこで間違えたのか』 藤山浩 2020

著者は1959年生まれ。ほぼ同世代だ。1960年代から10年ごとに日本社会の進行をコンパクトにまとめて、各時代の特色と問題点を明確に指摘する。著者の個人史も交えての論述は、僕自身の生きた同時代の解説でもあるから、興味深く、ありがたかった。 その分析の…

「沖」の由来

「ここには古くから、『沖』と呼ばれる古屋があった。この名の由来は定かではないが、この古屋は、母屋と納屋と、土蔵に連なる離れ屋から成っていた。決して分限者の構えではなかったが、庭には、青桐や楓、槙などが機嫌よく樹っていた。その佇まいは結構和…

『流しの公務員の冒険』 山田朝夫 2016

東大法学部卒の自治省のキャリア官僚だった著者(1961-)が、大分県への出向をきっかけにして、地方での仕事の魅力に取りつかれて、小規模の町や市で課題解決の仕事を請け負う「流しの公務員」として活躍する姿を描くドキュメンタリー。 古書店で見つけたの…

『「行政」を変える!』 村尾伸尚 2004

村尾伸尚(1955-)は、長く夜の某ニュース番組のキャスター(2006-2018)を務めていた官僚OBだ。彼がかつて大蔵省を辞めて三重県知事選に出馬した経緯や、役所勤めをしながら行っていた市民運動、そこでの行政を中心とした国の在り方の改革プランを、熱く…

『歩いて読みとく地域デザイン』 山納洋 2019

著者は「まち観察企画」というワークショップを主宰している。参加者は特定のまちを90分間自由に歩いて、再集合したあとそれぞれの見聞をシェアするというものだ。案内しないまち歩きであり、自分で観察し発見するまち歩きであるといえる。 本書では、まち歩…

読書会の作法

僕が毎月参加している読書会では、参加者は事前に課題図書を読んで、課題レポートを提出しないといけない。今回の課題の中に、身近な事柄をユーモラスに描くというものがあったので、主宰の人となりの魅力について書いてみた。 今は読書会もブームとなってい…

ランドマークの消滅

ひさしぶりにコガネ町の商店街を訪ねる。ほとんどの店がシャッターを下ろしていて、いよいよおじさんの口上どおりに「黄金市場もいよいよ危ない」事態になったかと思ったが、どうやら日曜日は市場全体のお休みの日らしい。しかし、この市場の(ごく近い)近…

斜面緑地のこと

国立市の市長の昔の講演録を読んでいたら、国立という街の当初の設計について、こんなことが書いてあった。 国立は駅前ロータリーから三本の大通りが放射状に伸びている。大学通りは大学のキャンパスを貫いて中心軸をつくり、冨士見通りは富士山が突き当りに…

『ここが変だよ地方議員』 小田りえ子 2015

民間企業から、政令市である川崎市の市会議員が一期目の在任中に出した本。トピックが見開き二ページにまとめられていて、その内容を解説する四コマ漫画と、女性の話し言葉による一行まとめがあるので、とても分かりやすい。 著者が民間企業在職中に地方自治…

『分権は市民への権限委譲』 上原公子 2001

一昨日の読書に引きずられて、今度の僕の故郷の街の市長の講演録を読んでみる。偶然20年ばかり前の同じ時期を扱ったものだ。 この人は市民運動家だから、マスコミ人以上に理念や正義を振り回し、周囲とのあつれきを巻き起こす。自分の理念を実現するためにた…

『記者市長の闘い』 滝口凡夫 2002

地元の市で三期12年市長をつとめた著者の回想録。すでに20年が経った時点から読むと、市政の金権体質の克服も、市町村合併も、大学等の誘致の話も、どれも小粒で平凡な話に思えて、さほど興味が持てない。実際に関わった人間たちにとって、大変なエネルギー…

『公務員クビ!論』 中野雅至 2008

これも積読本。公務員の不祥事によるバッシングと公務員改革が本格化した頃の本だ。今になってようやく読む。 公務員受難の時代が続くという予言は当たったが、著者の主張する官民統一から官民流動の流れが起きているとはいえないし、12年たっても公務員をめ…

『地方消滅』 増田寛也編著 2014

5年前のベストセラー。帯には、「新書大賞2015第1位」の文字が躍っている。例によって、積読本を今になって読む。 出生率の低下や少子化につていは、だいぶ前から社会問題になっていた。しかし、そのことがもたらす人口減少については、せいぜい高齢化が指…

ある「副都心」の盛衰

僕は、大学を卒業した36年前に、転勤でこの地方都市に越してきた。全くの偶然としか言えないが、別の会社に就職した友人もこの街の支店勤務になった。 僕の勤務場所は、100万都市の中心街にあったが、友人の支店はそこから少し離れた街にあって、その政令都…

「『流域地図』の作り方」 岸由二 2013

ちくまプリマ―新書の一冊だから、若い人向きに書かれていて、イラストも豊富で読みやすい。けれど、真に原理的で、そうであるがゆえに真に実践的で、革命的な本だ。と、やたら肩に力が入ってしまうくらい、素敵な本だと思う。 たとえば、かつて人類の歴史を…

『生き心地の良い町』 岡檀 2013

全国的にみて自殺率の極めて低い四国の小さな町を調査して、「自殺予防因子」を見出した自らの研究をわかりやすく解説している。著者の真面目さ一生懸命さは伝わってくるのだが、僕にはよみにくい本だった。 ここでの研究の成果というものは、いかにもそうい…

『国土の変貌と水害』 高橋裕 1971

令和2年7月豪雨と命名された大雨災害が続いている。先日、電車が遅れているため、次男を勤務先まで迎えにいくために、遠賀川の堤防の上の道路で車を走らせた。水かさが増して堤防の上部に迫る濁流の水面は、堤の反対側の街並みよりも明らかに高くなっている…

『地元経済を創りなおす』 枝廣淳子 2018

面白かった。今まで読んだ街づくりや地域経済の本の中でも、群を抜く面白さと説得力がある。 かつての地域おこしは、企業を誘致したり、補助金を受け入れたりすることが中心だった。とにかく地元にお金をもってくればいいと。しかし、そのお金がすぐに地方か…

図書館で本と出会う

『市民の図書館』の中に、こんな記述があった。誰もが、図書館の書棚で無名の著者の書物に出会い、その面白さに驚いたことがあるだろうと。 たしかに図書館では新刊書中心の書店には置かれていない本があって、しかも無料で気軽に借りることができるから、読…

『市民の図書館 増補版』 日本図書館協会 1976

薄い新書だが、日本の図書館の方向を決定づけた重要な本らしい。増補前の初版は1970年の刊行。これを読んで、二点気づいたことがあった。 一点は、自分が半世紀以上生きてきて、その間に時代の大きな曲がり角を経験しているのだな、ということ。もう一点は、…

『つながる図書館』 猪谷千香 2014

図書館司書の勉強をした関連で手にした本。いくつかの実際の図書館のレポートと、図書館をめぐる動向とが、コンパクトにまとめられている良書だ。 今、図書館は大きく変わりつつある。身近な図書館を利用しているだけでは、そこが先進的な取組みをしている図…

マイクロツーリズムについて

今度のコロナ禍で、観光業はもっとも大きな打撃をうけているだろう。ある観光会社の代表が、少し前にニュースで「マイクロツーリズム」について話しているのが耳に残った。ネットにもその話題は出ているようだが、僕が理解した範囲を書き留めておこう。 今後…

オンライン読書会に参加してみた

ミーティング用アプリZoomを使った読書会に参加。最初は、音声を出すのにとまどったり、画面の使い方が良くわからかったりしてあせったが、慣れてしまうと難しいものではなさそうだった。 カメラで画像がとられているとはいえ、当然だが死角はいっぱいあって…

ヒロシマノート

広島市内を、一日かけて一人で歩いた。新幹線の停車駅だから、何度も来ているような気になっていたが、実際に街を歩くのは、3回目かもしれない。それも駆け足で寄るといった程度で、一泊してじっくり見るのは初めてだった。 同じ九州ということもあって、長…

ビブリオバトル初参戦

地元のグループが主催するビブリオバトルの講座に初参加して、気づいたことをいくつか。やはり、この方法は、読書についての経験も趣味嗜好もさまざまな人たちを、横一線に同じ場所に立たせるという点ですぐれたものだと思う。 読書好きというのは、ともすれ…

ビブリオバトルに行ってみた

知的書評合戦といわれるビブリオバトルに初参加した。たまたま出かけた地元の図書館でやっていたので、飛び入りで観戦してみたのだが、観戦者はだいたい20人ほど。 バトラー(本を紹介する人)は5人で、全員の発表のあとにチャンプ本を投票で決める。発表の…

たかが棒、されど棒

地元のある集会に参加した。被差別当事者の運動体の研修会である。めったにない機会だったので、面白く楽しめた。 こうした運動団体、政治団体、宗教団体の例にもれず、参加者は高齢化している。主力は70代、60代で、ごく少数の「若手」といっても40代以上だ…