大井川通信

大井川あたりの事ども

地方・まちづくり

冨士見通りの景観

3月に東京に帰って、実家のあった国立の駅前を歩いているとき、冨士見通りの異変に気づいた。駅前ロータリーから西に伸びる冨士見通りは、富士山にまっすぐに向かっていて、天気さえよければ突き当りに富士の雄姿を見ることができる。ところが、その時ふと見…

行橋の商店街を歩く

行橋の街は、40年以前も前に仕事の関係で何度も来たことがあるので、親しみがある。当事は生命保険会社の社員だったから、新人の営業員さんといっしょに近所に飛び込みの営業をしたりもした。当時の営業所の建物が、市立の美術館として生まれかわっているこ…

国土をなぞる

福岡空港から羽田まで、なめるように国土を見下ろし続けた。翼が邪魔にならない前方の窓側の席で気象条件もよかったからだが、ここまでしたのは初めてのような気がする。定年で精神的に余裕が出たせいかもしれない。東京の書店で大判の日本地図を買って、さ…

コロナ禍の風景(観光地編)

コロナ禍も3年目に入って、やや終息の兆しを見せている。ちょうど一年前に、家族3人で感染して、僕自身重症一歩手前までいっているからその恐さはよく知っているけれども、なんとなく人間とその社会がウイルスとの共生のプロセスに入ったような気もする。外…

ケヤキのシンボルツリー

『町を住みこなす』を読んで、住宅街の中に変化が生じ多様な要素が交じることが、そこでの暮らしを豊かにして、住宅街の寿命を伸ばしていくことを知った。均質な住宅街の高齢化という問題点を知りながら、今までそれの処方箋については考えたことがなかった…

木造市場の衰退

三年半ばかり前に現代美術展の会場となった筑豊市場に、ひさしぶりに寄ってみた。市場隣の老舗の喫茶店「らんぶる」で、モーニングを食べる目的もある。年配のご夫婦が、格安で甘い卵焼きのサンドイッチを出してくれるのだ。 僕は、商店街を舞台にしたアート…

『社会的共通資本』 宇沢弘文 2000

柄谷の本で紹介されていたので、この著名な著者の本を手にとってみる。新書の体裁だけれども、経済学の大御所だから、とてもシンプルなテーゼを正攻法で論じていく。 繰り返されるテーゼは、言われてみればきわめてまっとうなものに思えるのだが、経済学や世…

『地域衰退』 宮崎雅人 2021

地方衰退の危機的現象を描いた本や、その中で元気な地方の事例や町おこしの実際を描いた本は多いが、類書とは違う個性(骨太の分析と処方箋というべきか)が感じられた。 データに基づき、国の政策の関与の問題点も指摘しながら、地方衰退のメカニズムを明確…

『老いる家 崩れる街』 野澤千絵 2016

家。家。家。僕の頭の中は、おそらく家のことでいっぱいだ。子どもの頃は、家が世界そのもので、それは世界の中心であり続けた。よその家との比較ができるようになると、それは悩みやコンプレックスの種となった。社会人となって、家を購入すると、そのため…

『不安な個人、立ちすくむ国家』 経産省若手プロジェクト 2017

数年前に話題になった本だが、これもパラパラとながめて、ほっぽり出していた。あらためて読むと、面白い。レポート部分は50頁にもみたないが、充実している。これを活用しないのはもったいないところだった。 結論部の提案は三点。高齢者を一律に弱者と見な…

ランドマークの消滅

ひさしぶりにコガネ町の商店街を訪ねる。ほとんどの店がシャッターを下ろしていて、いよいよおじさんの口上どおりに「黄金市場もいよいよ危ない」事態になったかと思ったが、どうやら日曜日は市場全体のお休みの日らしい。しかし、この市場の(ごく近い)近…

『ここが変だよ地方議員』 小田りえ子 2015

民間企業から、政令市である川崎市の市会議員が一期目の在任中に出した本。トピックが見開き二ページにまとめられていて、その内容を解説する四コマ漫画と、女性の話し言葉による一行まとめがあるので、とても分かりやすい。 著者が民間企業在職中に地方自治…

『分権は市民への権限委譲』 上原公子 2001

一昨日の読書に引きずられて、今度の僕の故郷の街の市長の講演録を読んでみる。偶然20年ばかり前の同じ時期を扱ったものだ。 この人は市民運動家だから、マスコミ人以上に理念や正義を振り回し、周囲とのあつれきを巻き起こす。自分の理念を実現するためにた…

『記者市長の闘い』 滝口凡夫 2002

地元の市で三期12年市長をつとめた著者の回想録。すでに20年が経った時点から読むと、市政の金権体質の克服も、市町村合併も、大学等の誘致の話も、どれも小粒で平凡な話に思えて、さほど興味が持てない。実際に関わった人間たちにとって、大変なエネルギー…

『公務員クビ!論』 中野雅至 2008

これも積読本。公務員の不祥事によるバッシングと公務員改革が本格化した頃の本だ。今になってようやく読む。 公務員受難の時代が続くという予言は当たったが、著者の主張する官民統一から官民流動の流れが起きているとはいえないし、12年たっても公務員をめ…

『地方消滅』 増田寛也編著 2014

5年前のベストセラー。帯には、「新書大賞2015第1位」の文字が躍っている。例によって、積読本を今になって読む。 出生率の低下や少子化につていは、だいぶ前から社会問題になっていた。しかし、そのことがもたらす人口減少については、せいぜい高齢化が指…

ある「副都心」の盛衰

僕は、大学を卒業した36年前に、転勤でこの地方都市に越してきた。全くの偶然としか言えないが、別の会社に就職した友人もこの街の支店勤務になった。 僕の勤務場所は、100万都市の中心街にあったが、友人の支店はそこから少し離れた街にあって、その政令都…

『生き心地の良い町』 岡檀 2013

全国的にみて自殺率の極めて低い四国の小さな町を調査して、「自殺予防因子」を見出した自らの研究をわかりやすく解説している。著者の真面目さ一生懸命さは伝わってくるのだが、僕にはよみにくい本だった。 ここでの研究の成果というものは、いかにもそうい…

『市民の図書館 増補版』 日本図書館協会 1976

薄い新書だが、日本の図書館の方向を決定づけた重要な本らしい。増補前の初版は1970年の刊行。これを読んで、二点気づいたことがあった。 一点は、自分が半世紀以上生きてきて、その間に時代の大きな曲がり角を経験しているのだな、ということ。もう一点は、…

『つながる図書館』 猪谷千香 2014

図書館司書の勉強をした関連で手にした本。いくつかの実際の図書館のレポートと、図書館をめぐる動向とが、コンパクトにまとめられている良書だ。 今、図書館は大きく変わりつつある。身近な図書館を利用しているだけでは、そこが先進的な取組みをしている図…

ヒロシマノート

広島市内を、一日かけて一人で歩いた。新幹線の停車駅だから、何度も来ているような気になっていたが、実際に街を歩くのは、3回目かもしれない。それも駆け足で寄るといった程度で、一泊してじっくり見るのは初めてだった。 同じ九州ということもあって、長…

たかが棒、されど棒

地元のある集会に参加した。被差別当事者の運動体の研修会である。めったにない機会だったので、面白く楽しめた。 こうした運動団体、政治団体、宗教団体の例にもれず、参加者は高齢化している。主力は70代、60代で、ごく少数の「若手」といっても40代以上だ…

テンちゃんと山伏どん

休みの日。妻は彫金教室に、次男は温泉施設に出かけたので、昼前にぶらりと家を出る。車だから、今日は大井川歩きモードではない。 駅近くのランチカフェで、マスターの高崎さんと、ランチを食べながら話し込む。ゆるキャラを考案し、絵本をはじめとする商品…

新開景子さんのあしあと

2年前に近所のマンモス団地で行われた連続講座に通った。題して、団地再生塾。建設して半世紀近くなる団地には、高齢化や空き家の増加等の問題がある。それを住民主体で、様々な手法や実践事例を学びながら考えようという講座だった。 中心人物が大学の建築…

東京の災害

東京を出て、今の地方都市での生活がすいぶん長くなった。東京といっても多摩地区だし、都心に通ったのは大学の4年間しかない。だから、たまに東京に帰省すると、今の地元での時間の流れやリズムとの違いが、どうしようもなくはっきりする。 9日は、台風15号…

上池台3丁目と東雪谷4丁目

東京都大田区の住宅街。商店街や工場や目立つ公共施設があるわけでもなく、特に特徴がない地域だ。地名に「台」と「谷」がつくくらいだから、地形には起伏があり、坂が多い。 東雪谷4丁目の方は、洗足池へと流れる狭い水路があり、細い緑地帯にもなっていて…

二つの聖地

実家の整理の話があって、急遽東京にいく。早い飛行機にのったが、初日は用事はない。近頃は内向きの生活をしているせいか、行きたい美術展も名所旧跡も観光スポットも思い浮かばない。それで、聖地巡礼をすることにした。 実は、初めからそう思って訪ねたわ…

「なんもかんもたいへん」のおじさんとしんみり話す

黄金市場を二カ月ぶりに訪ねる。日曜日のためか、ほとんどの店がシャッターを下ろしていて、平日の活気がない。後で聞くと、大通りをはさんだ古くからあるスーパーが年度末で閉店してしまったのも影響が大きいという。何割もお客さんが減ったらしい。何でも…

「阿蘇の灯」の語り部から聞く

三年前の熊本大地震による阿蘇の被災地でのフィールドワークに参加した。 当時は、熊本城の被害がクローズアップされたが、僕には、阿蘇訪問時によく使っていた阿蘇大橋の崩落が衝撃的だった。その近くに下宿する東海大の学生がアパートの倒壊で亡くなり、た…

弱さは強さ

勤務先に次男を迎えにいくついでに、駅近くのアーケード商店街を歩く。夕方近くというのに、人はほとんど歩いていない。開いている店が十軒に一軒もないような、文字通りのシャッター街だ。それが延々と続く。 別の商店街に入ると、こちらはさらに老朽化して…