大井川通信

大井川あたりの事ども

地方・まちづくり

コロナ禍の風景(観光地編)

コロナ禍も3年目に入って、やや終息の兆しを見せている。ちょうど一年前に、家族3人で感染して、僕自身重症一歩手前までいっているからその恐さはよく知っているけれども、なんとなく人間とその社会がウイルスとの共生のプロセスに入ったような気もする。外…

多摩川の思い出

すこし前に多摩川の本を読んで、子ども時代の多摩川のことを思い出した。 多摩川は、実家から直線で3km近くあったから、小さな子どもにとって簡単に行ける距離ではない。それでもすいぶんなじみ深いのは、川べりに市営の清化園プールがあって、幼児の頃か…

『タマゾン川』 山崎充哲 2012

僕にとって、故郷の川は、東京郊外を流れる多摩川だ。これは多摩川で自然保護に取り組む、自然環境調査コンサルタントを仕事とする著者の本。子ども向きの本だから、わかりやすくスラスラと読めて、とてもためになった。 多摩川がなぜ、タマゾン川なのか。そ…

『わが住む村』 山川菊栄 1943

とても良い本だった。漠然と、女性社会主義者として高名な山川菊栄(1890-1980)によるものだから、もう少し堅苦しく図式的教条的な内容なのかと予想していたが、地に足のついた視点で、血の通った平明な文章で書かれていることに感心した。 それは、1936年…

勉強会3周年と転校生の話

友人の吉田さんと3年前の12月に始めた勉強会が丸三年を迎えた。コロナ禍の入院でやむなく開けなかった2回をのぞいては皆勤で、今回が35回目にあたる。 僕は例の通り、ブログから三本の記事をまとめて「馬と機関車」と題して話をする。吉田さんは、仕事がらみ…

ケヤキのシンボルツリー

『町を住みこなす』を読んで、住宅街の中に変化が生じ多様な要素が交じることが、そこでの暮らしを豊かにして、住宅街の寿命を伸ばしていくことを知った。均質な住宅街の高齢化という問題点を知りながら、今までそれの処方箋については考えたことがなかった…

35歳と生まれたて

『町を住みこなす』(大月敏雄 2017)をようやく読了。新書ながら充実の内容で、読みごたえがあった。 どんな家に住み、家とどんなふうにかかわるかは、生活の根幹の部分である。しかし、その部分は、自分の足元であるだけに、意識化されることのないブラッ…

木造市場の衰退

三年半ばかり前に現代美術展の会場となった筑豊市場に、ひさしぶりに寄ってみた。市場隣の老舗の喫茶店「らんぶる」で、モーニングを食べる目的もある。年配のご夫婦が、格安で甘い卵焼きのサンドイッチを出してくれるのだ。 僕は、商店街を舞台にしたアート…

小ネタが尽きると、あっという間に地域は衰退する

新聞連載の「折々のことば」に紹介されていた、玄田有史と荒木一男の言葉。「人口が減っても、地域は簡単になくならない。だが、」のあとに表題の言葉が続く。 鷲田清一の解説はこうだ。 「東大社会科学研究所で〈危機対応学〉プロジェクトを推進した二人は…

『社会的共通資本』 宇沢弘文 2000

柄谷の本で紹介されていたので、この著名な著者の本を手にとってみる。新書の体裁だけれども、経済学の大御所だから、とてもシンプルなテーゼを正攻法で論じていく。 繰り返されるテーゼは、言われてみればきわめてまっとうなものに思えるのだが、経済学や世…

『地域衰退』 宮崎雅人 2021

地方衰退の危機的現象を描いた本や、その中で元気な地方の事例や町おこしの実際を描いた本は多いが、類書とは違う個性(骨太の分析と処方箋というべきか)が感じられた。 データに基づき、国の政策の関与の問題点も指摘しながら、地方衰退のメカニズムを明確…

『老いる家 崩れる街』 野澤千絵 2016

家。家。家。僕の頭の中は、おそらく家のことでいっぱいだ。子どもの頃は、家が世界そのもので、それは世界の中心であり続けた。よその家との比較ができるようになると、それは悩みやコンプレックスの種となった。社会人となって、家を購入すると、そのため…

『不安な個人、立ちすくむ国家』 経産省若手プロジェクト 2017

数年前に話題になった本だが、これもパラパラとながめて、ほっぽり出していた。あらためて読むと、面白い。レポート部分は50頁にもみたないが、充実している。これを活用しないのはもったいないところだった。 結論部の提案は三点。高齢者を一律に弱者と見な…

『日本はどこで間違えたのか』 藤山浩 2020

著者は1959年生まれ。ほぼ同世代だ。1960年代から10年ごとに日本社会の進行をコンパクトにまとめて、各時代の特色と問題点を明確に指摘する。著者の個人史も交えての論述は、僕自身の生きた同時代の解説でもあるから、興味深く、ありがたかった。 その分析の…

「沖」の由来

「ここには古くから、『沖』と呼ばれる古屋があった。この名の由来は定かではないが、この古屋は、母屋と納屋と、土蔵に連なる離れ屋から成っていた。決して分限者の構えではなかったが、庭には、青桐や楓、槙などが機嫌よく樹っていた。その佇まいは結構和…

『歩いて読みとく地域デザイン』 山納洋 2019

著者は「まち観察企画」というワークショップを主宰している。参加者は特定のまちを90分間自由に歩いて、再集合したあとそれぞれの見聞をシェアするというものだ。案内しないまち歩きであり、自分で観察し発見するまち歩きであるといえる。 本書では、まち歩…

読書会の作法

僕が毎月参加している読書会では、参加者は事前に課題図書を読んで、課題レポートを提出しないといけない。今回の課題の中に、身近な事柄をユーモラスに描くというものがあったので、主宰の人となりの魅力について書いてみた。 今は読書会もブームとなってい…

ランドマークの消滅

ひさしぶりにコガネ町の商店街を訪ねる。ほとんどの店がシャッターを下ろしていて、いよいよおじさんの口上どおりに「黄金市場もいよいよ危ない」事態になったかと思ったが、どうやら日曜日は市場全体のお休みの日らしい。しかし、この市場の(ごく近い)近…

斜面緑地のこと

国立市の市長の昔の講演録を読んでいたら、国立という街の当初の設計について、こんなことが書いてあった。 国立は駅前ロータリーから三本の大通りが放射状に伸びている。大学通りは大学のキャンパスを貫いて中心軸をつくり、冨士見通りは富士山が突き当りに…

『ここが変だよ地方議員』 小田りえ子 2015

民間企業から、政令市である川崎市の市会議員が一期目の在任中に出した本。トピックが見開き二ページにまとめられていて、その内容を解説する四コマ漫画と、女性の話し言葉による一行まとめがあるので、とても分かりやすい。 著者が民間企業在職中に地方自治…

『分権は市民への権限委譲』 上原公子 2001

一昨日の読書に引きずられて、今度の僕の故郷の街の市長の講演録を読んでみる。偶然20年ばかり前の同じ時期を扱ったものだ。 この人は市民運動家だから、マスコミ人以上に理念や正義を振り回し、周囲とのあつれきを巻き起こす。自分の理念を実現するためにた…

『記者市長の闘い』 滝口凡夫 2002

地元の市で三期12年市長をつとめた著者の回想録。すでに20年が経った時点から読むと、市政の金権体質の克服も、市町村合併も、大学等の誘致の話も、どれも小粒で平凡な話に思えて、さほど興味が持てない。実際に関わった人間たちにとって、大変なエネルギー…

『公務員クビ!論』 中野雅至 2008

これも積読本。公務員の不祥事によるバッシングと公務員改革が本格化した頃の本だ。今になってようやく読む。 公務員受難の時代が続くという予言は当たったが、著者の主張する官民統一から官民流動の流れが起きているとはいえないし、12年たっても公務員をめ…

『地方消滅』 増田寛也編著 2014

5年前のベストセラー。帯には、「新書大賞2015第1位」の文字が躍っている。例によって、積読本を今になって読む。 出生率の低下や少子化につていは、だいぶ前から社会問題になっていた。しかし、そのことがもたらす人口減少については、せいぜい高齢化が指…

ある「副都心」の盛衰

僕は、大学を卒業した36年前に、転勤でこの地方都市に越してきた。全くの偶然としか言えないが、別の会社に就職した友人もこの街の支店勤務になった。 僕の勤務場所は、100万都市の中心街にあったが、友人の支店はそこから少し離れた街にあって、その政令都…

「『流域地図』の作り方」 岸由二 2013

ちくまプリマ―新書の一冊だから、若い人向きに書かれていて、イラストも豊富で読みやすい。けれど、真に原理的で、そうであるがゆえに真に実践的で、革命的な本だ。と、やたら肩に力が入ってしまうくらい、素敵な本だと思う。 たとえば、かつて人類の歴史を…

『生き心地の良い町』 岡檀 2013

全国的にみて自殺率の極めて低い四国の小さな町を調査して、「自殺予防因子」を見出した自らの研究をわかりやすく解説している。著者の真面目さ一生懸命さは伝わってくるのだが、僕にはよみにくい本だった。 ここでの研究の成果というものは、いかにもそうい…

『国土の変貌と水害』 高橋裕 1971

令和2年7月豪雨と命名された大雨災害が続いている。先日、電車が遅れているため、次男を勤務先まで迎えにいくために、遠賀川の堤防の上の道路で車を走らせた。水かさが増して堤防の上部に迫る濁流の水面は、堤の反対側の街並みよりも明らかに高くなっている…

『地元経済を創りなおす』 枝廣淳子 2018

面白かった。今まで読んだ街づくりや地域経済の本の中でも、群を抜く面白さと説得力がある。 かつての地域おこしは、企業を誘致したり、補助金を受け入れたりすることが中心だった。とにかく地元にお金をもってくればいいと。しかし、そのお金がすぐに地方か…

図書館で本と出会う

『市民の図書館』の中に、こんな記述があった。誰もが、図書館の書棚で無名の著者の書物に出会い、その面白さに驚いたことがあるだろうと。 たしかに図書館では新刊書中心の書店には置かれていない本があって、しかも無料で気軽に借りることができるから、読…