大井川通信

大井川あたりの事ども

図書館サービス特論レポート(2020年3月提出)

2019年度に近畿大学の通信教育部の図書館司書コースを受講した。なんとか単位をとって資格を取得したのだが、一番苦労したのが、タイトルの科目のレポート課題だった。

「身近にある公共図書館を観察し、課題解決支援サービスの内容・特徴を述べるとともに、地域の課題から他にどのようなサービスが実現可能か提示せよ」という課題で、担当教官が厳しいという評判だったため、館長が知り合いの図書館を調査し、長く続けている読書会活動を切り札にして書いたのだが、それでも書き直しを命じられた。

客観的なデータの提示が不可欠だったので、ネット調査で読書会の開催状況の表を作り、なんとか合格点をもらえた。

今回、地元でのビブリオバトル市民グループに加わることになり、3年前にそれなりに頑張って書いたこのレポートを思い出した。今後の自分の指針にもなると思って、打ち直してみた。なお、調査対象図書館のある自治体は、僕の地元より福岡市に近く規模も小さいが、状況や課題は大きく違わないだろう。

 

1.課題対象図書館の概要

調査対象館の名称は、〇〇町立図書館で、所在地は〇〇であり、平成19年に開館した比較的新しい図書館である。県の社会教育行政出身の図書館長から館内案内及び運営に関する説明を受けた。

平成30年の実績で、蔵書数は約15万冊であり、年間貸出数は約20万冊となっている。人口一人当たりの貸出数は5.78冊であり、町村立図書館の全国平均をやや下回っているため、貸出図書セットによる地域文庫支援や、「夜の図書館カフェ」等のイベント開催により利用の拡大を図っている。

2.課題解決サービスの内容・特徴

(1)学校教育支援

当館の特徴は、学校教育支援の充実した取組である。町内の8小中学校のすべてに、教育委員会社会教育課図書館係所属の学校司書を配置している。町立図書館との組織的な一体性により、図書館職員との月2回の会議や年4回の研修会が実施されており、図書館と学校との連携した取組が可能となっている。

「小学校読書リーダー養成講座・中学生読書サポーター養成講座」と「図書館を使った調べる学習コンクール」がその二本柱であり、これらの成果により、本年度に子どもの読書活動優秀実践図書館として文部科学大臣表彰を受けている。

学校図書館での利用状況は確実に増加しており、特に小学校においては、一人平均冊数が年間100冊を超えている。また中学校においても、ビブリオバトルの年4回の大会が恒例となっている。

(2)医療情報提供

近隣の病院との連携により、複合施設内で医師による健康講座を開催した。それに合わせて、館内に健康情報コーナーを設けて、医療関連図書を提示する取組を行った。

しかし、これは館長の個人的なつながりと企画に基づく単発の事業であり、継続して実施する予定はない。

3.設置地域の課題

大都市福岡市(人口約159万人)に隣接している小自治体(人口約3万7千人)であり、旧集落の住民と開発団地の住民との間に溝があって、地域コミュニティとしての一体感に欠くという問題点がある。多くの住民が福岡市内へと通勤、通学を行っており、福岡市内の豊富な商業施設や文化施設を利用しているという実態がある。

ここにおいて、町独自のコミュニティを活性化させて、住んで良かったと思える街づくりをするという課題が浮上してくる。地域住民のつながりを作ることで、地域としての独自の魅力をつくることが求められる。

4.実現可能なサービスの提示

(1)現行サービスに対する評価

市町村規模及び町立図書館の体制を考えると、学校教育支援にほとんど特化する形で館の運営を行っていることはやむを得ないことと思われるし、むしろ経営資源の最適配分の観点からは、賢明な政策であると評価できる。この点で、県内外から髙い評価を受けているのは大きな成果といえるだろう。このため、学校支援の実績と手法の延長線上に、新たな課題解決サービスを構想するのが現実的であり、有効であると考える。

(2)実現可能なサービスの条件

本館においても図書館予算は厳しく、図書購入費も減額の方向にある。図書館員の定数も限られており、嘱託職員の努力によって図書館運営が成り立っている現状がある。図書館長自らの企画や実務で対応している取組もあるが、継続性に欠ける問題がある。

このため、新たな実現可能なサービスは、図書館単独の力によるものでなく、市民やNPOとの連携に基づき、彼らの主体的で継続的な活動や工夫を活かすものでなければならない。

(3)読書会活動の現状

近年、若い世代を中心に読書会が新しい盛り上がりを見せている。主にインターネットを使って広報しているのが特徴で、本を媒介にして新しいコミュニティを作ろうという動きである。

福岡市内及び〇〇町の属する〇〇郡について、読書会開催状況を調べてみると、別添資料の調査結果(2020年3月インターネット調査。2019年以降開催実績のある読書会は、福岡市内で10件で、紹介形式が8件、課題本形式が2件)のとおり、福岡市内には多様な読書会が存在し定期的に開催されている。一方、〇〇郡内には、単発の読書会の情報が2件あるのみで、〇〇町に限っていえば全く存在していない。

ところが福岡市内開催の読書会には市外からの参加者も多く、ある読書会では3割程度が市外からの参加であり、近場に読書会がないため遠方から参加している実態がある。

 

(4)読書コミュニティづくりの支援(〇〇町を「読書の街」へ)

〇〇町の場合、小中学校において読書活動の教育に実績があり、ビブリオバトル等の手法の実践の蓄積もある。しかし、読書を楽しみながら人とつながることを覚えた子どもたちが、高校生、大学生、社会人となった場合に、読書活動を継続する受け皿を町内に用意していないという問題がある。

図書館がヤングアダルトや社会人を対象にした読書会活動やビブリオバトル等を企画し、市民主体の読書会活動を活性化させて、読書を通じたコミュニティづくりの支援を行うというのが、ここでの提案である。

 

 

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