大井川通信

大井川あたりの事ども

2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧

トンビとカラス

テレビシリーズの日本昔話に、こんな話を見つけた。 昔、鳥はみんな白かったという。トンビの田んぼの田植えを、鳥たちみんなが手伝いにきたりするのは微笑ましい。村人の似姿だ。そのときに、連れてきたヒナたちが、親を間違えてついて帰ってしまう。 村の…

雨ごいとW杯

子どもの頃、地理の授業で、降水量の少ない四国の讃岐平野にため池が多いと習った記憶がある。近所を歩くと、僕が住む地域も、小さなため池があちこちにある。ほとんど江戸時代に作られたもので、水量の豊富な川がないことが理由だろう。それでも日照りには…

文学的半生

小説を読む読書会で、事前に提出する課題のなかに「文学に興味を持っていなかったら、あなたの人生や性格は、今とどのように違っていたと思いますか」という質問があった。 参加者は、読書好きの若い人が多くて、文学のおかげで、視野が広くなったり、考えた…

こんな夢をみた(欠陥住宅)

自宅を建て直したのだろうか、外観も内装も見違えるようだ。しかし、いざ暮らし始めると、隣家の奥さんが、いつの間にか室内で探し物をしている。よく見ると、建物の一面が隣家とつながっていて、壁がない。ケースみたいなものを積み重ねて、仕切りにしてあ…

『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』 大澤真幸 2018

読書会の課題本。後書きを見ると、著者は講義で話をしただけで、事実誤認の修正や内容の補足を含めた、本にするすべての作業を他者にゆだねていることがわかる。だから、当然ながら、とても「雑な」印象の本だ。そして、雑であることに関して、著者はおそら…

『涼宮ハルヒの消失』2010

『君の名は』を観るついでに『涼宮ハルヒの消失』を借りて、久しぶりに観た。やはり良かった。二作続けて観ると、後者の描く世界の広さや深さがきわだっているように感じられた。もちろん、前者もすぐれた愛すべき作品だし、原作とアニメのシリーズを背景に…

巨大なもの

これまた、今頃になってビデオ録画した『シン・ゴジラ』(2016)を観た。十分面白く、楽しめる作品だった。冷静になれば、生物にすぎないゴジラを、あれほど強力な存在に描くのは無理があるし、そのわりに無防備に活動停止してしまうのはどうかと思う。しか…

ある美術家の生涯

ある美術家の回顧展を公立美術館に観に行く。 1960年代末には、既存の表現や制度を「粉砕」して、グループで「ハプニング」と称する過激な実践を繰り返すが、逮捕され、孤立する。この時代は、ビラやポスターや写真等の資料展示で、いわゆる作品はない。 1…

彗星の行方

今頃になって、レンタルビデオで借りて、新海誠監督の『君の名は』(2016)を観た。想像していたより、ずっと普通に楽しめるよい作品だった。物語では、彗星の接近が重要なモチーフになっているのだが、夜空に長く尾をひく彗星の映像がとても印象的だ。 僕が…

トビとナマズ

ふいに田んぼから飛び上がったトビが、何かだらりとつりさげている。魚にしてはヒレなどが目立たずに、妙にぬめっとしている。反対側のあぜに着地しても、獲物に食いつく様子はない。気になって近づくと、また同じ獲物をぶるさげて、林の入り口まで飛んで行…

二人の法学者

もう何か月か前の話だが、同じ日の新聞に、ゆかりのある二人の法学者の記事が出ていた。 僕は法学部の出身だけれども、学生時代に購入した法律学の教科書や専門書で手元に残しているのは、一冊しかない。当時、学部の看板だった刑法学者のN教授の本だ。N先生…

バベルの塔

マウス型ロボットが/高速戦車に追われて/砂嵐の砂漠を疾走する 戦車がロケットを発射すると/マウスは敵もろとも/砂を噴き上げて自爆する あと一台・・・ 薄暗い塔の中/バビル2世は/大型モニターを見上げて/防衛システムに次々と指令を出す/すでに/…

こんな夢をみた(バベルの塔)

とある施設の広い敷地の一角に、なぜか僕の所有する建物が建っている。夢の終わりの頃には、施設はなぜか学校になっていて、僕の所有建物も、その校庭の隅の、かなり大きな建造物になっていた。夢の途中で設定が変更になるのはよくあることだ。むしろ、めま…

『視線と「私」』 木村洋二 1995

保育園で、園児たちが口々に「見よって、見よって」と叫ぶ姿を見て、20年以上前に出版された、この本のことを思い出した。 僕みたいな独学者は、行き当たりばったりに本を読んでいく中で、自分が生きて考えていく中で、本当に役に立つ論理を見つけていく。…

タコウインナー、あるいは見立てるということ

保育園の園庭で、三歳くらいの女の子が、手のひらに、いくつもの小さな花弁を載せて、それを見せに来る。「タコういんなー」 赤い花弁を伏せた姿は、広がった花びらがタコの足のようで、なるほどタコ・ウインナーそっくりである。女の子の親は、ウインナーソ…

見よって!見よって!見よって!

保育園で、二歳から五歳までの園児たちと遊ぶ。広い園庭は草原となっており、里山の緑に抱かれているような素晴らしい環境だ。本当に久しぶりに幼児たちに接して、新鮮な気づきがあった。 昔、「異文化としての子ども」という本がよく読まれていたけれども、…

芸は身を助ける

知り合いのやっているデイケア施設の6周年のお祭りで、何かやってくれと招待される。かつて霊場だった山のふもとの、ながめのいい斜面にある小さな施設だ。 施設に到着すると、すぐに紹介されるので、急いで赤い蝶ネクタイをつけて、出番となる。お年寄りや…

トンビに油揚げをさらわれる

こんどは、学校に行きにくい子どもたちに話す機会に、鳥の鳴き声について解説してみることにした。かりに人間関係に難しさを感じているなら、自然との友人関係は、どんなにか支えとなるだろう。 友だちになりたいなら、どうしたらいいかな。相手のことに関心…

お宝映像!

ゴミ出しから戻ってきた妻が、玄関で「お宝映像!お宝映像!」と声をあげる。出勤前で忙しかったけれど、笑顔に誘われて道に出ると、ゴミ捨て場の網に、タマムシがしがみついていた。光沢のある緑色の身体が美しい。自宅前で見かけることはめったにないから…

公民館青年室にて

ソレハネ チョットネ オモシロイネ/イトサンがせっかちに口をはさむ シゴト ツカレタナー/旭通りの映画館で働いているモッチャンが/甲高い声で/飛び込んでくる ソファーに長々と身体を投げ出したヨシムラサンが/退屈そうにあくびをする 僕はテーブルの…

たまり場の記憶

たまり場「かっちぇて」が一時お休みするそうだ。けんちきさんとかおるこさんには、今年の一月にお話しをうかがって、先月には二人の不在時に「かっちぇて」のある坂段を訪問している。3年間開いてきた自宅でのたまり場を、さりげなく休止する。何かを終わ…

どんどんかわっていくよね、かわらんと困るから

JRの車両で、向かいに座った老夫婦が、車窓風景をながめながらつぶやいた言葉。 40年前、50年前の思い出話をしながら、このあたりは田んぼだったのに、住宅街になってしまった、という。それを嘆くという風ではなくて、「変わらんと困る」と言い添えたの…

親戚の消滅

葬儀のあと、親戚と久しぶりに顔をあわす。僕たちの親の世代(80代以上)が姿を消して、いとこたち(50代以上)が中心になり、その子どもたち(20代以上)がいくらか加わる。 父親は4人兄弟、母親は6人兄弟。当時としては、けっして多くはないだろう…

光明遍照十方世界

僕は理屈としては、仏教では浄土真宗や曹洞宗に親近感を持っている。現実の巨大教団のあり方には問題があるのだろうが、それらの宗派の思想は精神性が高く、教えとしてシンプルで、虚飾がないという印象があるからだ。 葬式仏教は、考え方によっては、本来の…

俺だって社長なんだよ

駅前の南口と北口を結ぶ、広い通路で、自転車にまたがった中年の男が、初老の警備員に食ってかかっている。どうやら、自転車の運転を制止されたのが、気に入らないらしい。気が小さいくせに、おっちょこちょいで正義の味方を気取りたがる僕は、二人の間に、…

なるように、する(原田一言詩抄)

久しぶりに、大井村の賢人原田さんのお店に顔をだす。原田さんは、2年前から幼稚園で用務員をしているから、朝晩に保護者の車の誘導の仕事があり、店も不在がちだ。今はイモ畑を作るように頼まれているという。幼稚園の敷地のはずれの新しい小屋のことを聞…

鳥の声とともに(おまけ)

鳥の声の話をしたのは、視覚障害のある子どもたちのためだったけれども、同席した大人から反響があった。 教員の卵のKさんに、子どもたちの反応を聞いてみたら、何より自分が驚いたという。カラスの鳴き声の違いに気づいていたが、2種類いるとは知らなかっ…

鳥の声とともに(つづき)

子どもたちと鳥の声で楽しんだあとに、視覚障害が専門の教育大学の先生と、そのことを立ち話する機会があった。 先生は、鳥の剥製も触らせたらよかったですね、とアドバイスしてくれた。なるほどそうかもしれない。しかし、僕が鳥に興味をもってから、実際に…

鳥の声とともに

視覚特別支援学校に通う子どもたちに話す機会があった。本当は、決められた原稿の通りに挨拶すればいいのだけれども、どうしてもやりたいことがあった。昨年、同じような機会に少し鳥の鳴き声の話をしたのだが、子どもたちに好評だったと、あとで教えてくれ…

教育学者という謎

人は誰でも、自分の体験から作り上げた「色メガネ」というものを持っている。僕の場合、教育学者の話はつまらない、というものがそれだ。 僕はたまたま、現場の教員や教育学者の話を聞く機会を多少もっている。学校の先生は、どの世界でもそうであるように、…