大井川通信

大井川あたりの事ども

神々

大井里山身体見立ての巻

八五郎「おい熊公、お前さんとうとう大井の里山の縦走の山道を見つけたっていうじゃねえか」 熊五郎「八っつあん、さすがに早耳だね。大井林道を上がって、ため池の先の林道の終点の所から、山の斜面をのぼれるんじゃないかと、おれは密かににらんでいた。先…

古事記を読む(中巻)

読書会で、中巻を読む。前半を扱った回は急用で欠席したので、議論に参加できたのは景行天皇からの後半だけだが、簡単にメモしておこう。 まずは、高千穂の宮から、神武天皇(カムヤマトイワレビコ)が、天下を治めるために東征して大活躍をする。道理で、僕…

『記憶する民族社会』 小松和彦編 2000

民俗学の学術的な論文集を読んだのは、おそらく初めてではないか。今まで入門書や人気学者の評論やエッセイしか読んだことはなかった。 しかも、自分にはちょっとした因縁のある本である。刊行当時に興味をもって購入したが、後の蔵書整理の時に捨ててしまっ…

坂の神様

「古事記」を読んでいたら、坂の神様、というのがでてきた。 山の神様とか、海の神様とかいうならわかるが、坂の神様というのはちょっと違和感がある。坂というのは、何かある実体というよりも、土地の傾斜という状態のことだろう。そこを切り出して、神格化…

釣川浄土(「人と神様」編)

釣川の土手を歩いていると、前から手押し車にもたれて歩いてくるご婦人の姿がある。まずは挨拶と、秋晴れの話。念のため、ヒラトモ様のことを聞く。大井村でも知られていない神様を、ふつうには隣村の人が知るはずはないと思いながら。すると意外なことに、…

『暗黒神話』と竹原古墳

古事記を読んでいて、諸星大二郎の『暗黒神話』を読みたくなった。古事記のエピソードがストーリーに組み込まれているのを思い出したからだ。 たとえば、タケミカズチに敗れて諏訪に逃れたタケミナカタは、漫画の中では、洞窟に幽閉された両腕のない怪物とし…

古事記を読む(上巻)

読書会で古事記の現代語訳を読んでいる。上巻を2回で読み終わった。せっかく読んだばかりなので、まずそのストーリ-の要所を自己流にメモしておこう。 天に神様が生まれる。彼らは、イザナギ・イザナミの男女の神を地に送り出して、国を作らせる。イザナミ…

巨石信仰いろいろ

職場の近くに小さな丘陵があって、古い時代の古墳や遺跡などがならび、一種の神域となっている。丘の入り口には、大きな岩が控えていて、岩自体も神様としてまつられているが、そこは熊野神社の境内になっていて、鳥居や立派な社がある。 そこから丘の上の雑…

ヒラトモ様の祭壇

以前、ヒラトモ様のお参りをした時に、ふと個人的な遥拝所を作ることを思いついた。年々、里山も荒れて、枯れた竹が道をふさぐようになり、ヒラトモ様を祭る山の頂上へ登るのが難しくなっている。 もうしばらくの間、僕以外で、お参りをしてホコラの落ち葉を…

ゴーストハウスの神様

小泉八雲の「生神」(原題は「A Living God」)というエッセイを読む。 村人を津波から救い、生きているうちに神様としてまつられた村の長者のエピソードがメインなのだが、前半は、神社論になっていて、それがとても面白い。 まず、神社の建物について、そ…

黒尊様考(用山信仰論・その4)

★黒尊様と平知(ひらとも)様という近隣の神様の記録と伝承を組み合わせることで、語られていない平知様の成り立ちを推理してみた。二年前のレポート作成時には、世界的なパンデミックが発生して、再び黒尊様にわずかでも注目が集まるとは思いもしなかった。…

黒尊様考(用山信仰論・その3)

★この調査で知った全国のクルソン信仰の聖地、とりわけ黒尊様と漢字も読みも同じである宮崎県の巨石はぜひ参拝したいと考えているが、実現していない。 【クルソン信仰】 実は、今では、黒尊様の本体は、この霊山から授かった何か実体のあるもの(像、お札等…

黒尊様考(用山信仰論・その2)

★前回紹介したように黒尊様を「くろずみさま」と読む文献もあるくらいで、すぐに黒住教を連想した。このレポート作成のあとにも、市内に古い教会を発見したり、岡山県倉敷にある黒住教本部を参拝する機会があったりしたが、おそらく無関係であるという結論は…

黒尊様考(用山信仰論・その1)

★パンデミックへの恐怖から、クロスミ様に出番をお願いした以上、その神格の正式な説明が必要だろう。2017年の8月に、それまでの調査を簡単にまとめている。その文章を、4回に分けて紹介したい。 ooigawa1212.hatenablog.com 【はじめに】 大井川周辺を歩き…

クロスミ様、出番です

大井の隣村の用山(モチヤマ)には、黒尊(クロスミ)様と呼ばれる謎のホコラが祭られている。江戸時代末に、伝染病を抑えるのに力を発揮したと伝えれる伝説の神様だ。遠い昔話だと思っていたが、この時節なので、お参りにあがる。 前にお参りしたときには、…

身近なことばは4音になる

『日本語をつかまえろ!』(飯間浩明 2019)から。毎日小学生新聞の連載をまとめた本だから、ふつうの日本語論よりも、ずっと身近なやさしい話題が多い。 「あだ名」のトピックで、木村拓哉をキムタク、昔の事例として榎本健一をエノケンと呼ぶことを紹介す…

鳥居の話

元乃隅神社はごく新しい神社だが、その姿には景観の見事さという以上の説得力が感じられる。断崖絶壁の岩場に立てられた鳥居は、参詣者のためのものというよりも、海からやってくる超自然的な存在を迎え入れるためゲートと考えるほうが自然だろう。 諸星大二…

ヒラトモ様と「海竜祭の夜」

諸星大二郎の妖怪ハンターシリーズ「海竜祭の夜」は、加美島という架空の孤島の祭りが舞台になっている。島には安徳神社があり、浜辺には鳥居が並んでいるが、不思議な事にその鳥居は陸に向わず、カーブを描いて再び海に向いている。 海竜祭は、壇之浦で平家…

神々への初詣

正月の旅行から戻って、めまいが再発するなど体調がすぐれず、正月5日になってやっと大井の神々への初詣がかなった。 和歌神社、水神様の前で黙礼して、久しぶりに里山に入る。やはり竹が倒れて道があれている。昨年から息切れ勝ちでもあるし、山の中でたお…

元乃隅神社と諸星大二郎

萩の近くでは、元乃隅(もとのすみ)神社が、観光スポットとして、いつの間にか有名になっている。写真を見ると確かに魅力的なロケーションなので、二日目のメインの立ち寄り先に選んだ。 1955年の創建という新しい神社だが、白狐のお告げによるという稲荷社…

家族旅行と松陰神社

年末にバタバタとホテルを予約して、元日から一泊二日で家族旅行にでかける。家族4人で泊りがけのドライブに出かけるのは、ほとんど10年ぶりだ。長男の高校合格が決まって、そのお祝いもかねて津和野に行ったのが最後だった。それ以降は、子どもたちも自…

恵比須神社の遷座(せんざ)式

旧玉乃井旅館の玄関横に鎮座する恵比須神社。そのホコラの修繕と設置、鳥居の新築が終わり、ご神体を新しいホコラに移す、遷座式が行われた。玉乃井の玄関に紅白の幕を張り、祭壇を設けて、地域の神社の神主さんが祝詞がとなえ、玉ぐしが奉納される。 僕は、…

『ノンちゃん 雲に乗る』 石井桃子 1967

子どもの頃と同じ装丁で、今でも書店に並んでいる懐かしい本。これは姉の本だったから、当時僕は読んではいない。聞けば、良い本だから、と父が姉にプレゼントしたらしい。そんな父の想いを想像しながら、読んでみた。 戦前(昭和10年前後か)の東京郊外に住…

あちこちの南無阿弥陀仏

仕事関連で、一日に二カ所、葬儀に参列した。二カ所とも県内で遠方だったため、文字通り東奔西走した感じで、車の走行距離は250キロメートル以上になった。二カ所とも高齢の実母を亡くされている葬儀で、昨年の僕もそうだったが、同世代は中年を過ぎて親世代…

不空羂索観音の憂鬱

子どもの頃から、お寺が好きだった。近隣の武蔵野の素朴なお寺を自転車でみてまわった。高度成長途上の日本と我が家はいまだ貧しくて、関西への家族旅行などは考えられなかった。 だから、中学の修学旅行での初めての京都、奈良は、どれほどうれしかっただろ…

波切不動明王の由来

津屋崎で玉乃井旅館の玄関先のホコラの修繕に関わっているので、身近な小さな神様についてあらためて考えている。集落では村単位でまつる氏神の他に、村内の組ごとにまつるホコラがある。それよりさらに小さな単位(一族や近隣や家など)でまつる神様となる…

大本教と八龍神社(その2)

大本教と大和良作、栗原白嶺との関係を簡単な年表にしてみよう。 ・大正10年(1921年) 第一次大本事件 ・昭和7年(1932年) 大和良作、栗原白嶺と共著出版。 ・昭和9年(1934年) 大和良作の主導で地元に八龍神社建立。 ・昭和10年(1935年) 12月第二次大…

大本教と八龍神社(その1)

地元の大井川歩きで、思わぬ場所で大本教の名前を聞いたことがある。 大井とは隣村にある地域なのだが、そこは組ごとに庚申塔が残っており、寺社も多く、古い信仰が守られていそうな集落だ。八龍神社という地図にものっている神社があるのだが、近所の人から…

彼女はどうして神になったか?

天理教の教祖中山みきが神がかりをしたのが41歳、大本教の出口なおにいたっては55歳のときである。二人とも、その時までは、農家の嫁や母親として、あらゆる苦難に耐えて、辛抱強く家族の暮らしを支えていた。 何十年という時間の重さは、半端ではない。僕も…

神社という場所

昨日の展覧会評で、神社は非日常の場所であるという、当たり前のことを確認した。問題はその中身である。僕は、大井川歩きで、地元の小さな神社やホコラに足を運ぶ中で、これらの場所の意味を確かめていった。香椎宮のような巨大な神社のもつ意味合いも、か…